ワークライフバランスとは?正しく理解して人生を豊かに過ごそう
これからの時代に必要な制度
ワークライフバランスを訳すと「仕事と生活の調和」。男性女性どちらであっても性に左右されることなく、仕事と生活の両面を豊かにするという考えであり、今後ますます広がっていくであろう大切な制度です。
当初、女性の仕事と家事育児の両立を中心として広がりを見せたワークライフバランスという言葉ですが、終身雇用の崩壊といった社会情勢にともない、男女問わず大切な考え方へと変化しました。男性も、仕事だけに持てる時間すべてを投入するのではなく、家族やスキルアップといったことにも時間をかけたいという新しい価値観が生まれました。
ワークライフバランスは、男性女性ともに協力しながら仕事や家事育児、介護に従事し、さらに趣味やボランティアといった社会活動に携わる豊かな時間を生み出すための指針。よりよい明日を目指して、ワークライフバランスについて学びましょう。
バブル崩壊後から変わり始めた社会から考える
1980年代にアメリカで生まれた「ワーク・ライフ・バランス」。当時は仕事と育児の両立に悩む女性のためのものでしたが、時代の流れとともに男性・女性のどちらにも当てはまる考え方となりました。日本ではバブル崩壊以降、人々の仕事や生活の変化にともなって、徐々に広がりを見せはじめました。
非正規雇用社員が増加した
1990年以降、バブル崩壊による景気低迷が続きます。それにともなってリストラなどにより人々の雇用環境ががらりと変わりました。それまで存在していた終身雇用制度は実質的に崩壊し、非正規雇用社員が増加しました。非正規社員には契約期間があり、いつ契約終了になるか分かりません。
常にほかの可能性も見据えながらスキルアップすることが大切です。また逆に、正社員と違い時間外労働があまりないということをメリットにして、余暇を楽しむポジティブな考えも生まれました。
少子高齢化が進んだ
2000年以降、大きな社会課題となっているのが少子高齢化です。高齢化により介護人口が増えることは想像に難くなく、誰しも介護に割く時間がいつ必要になるかも知れません。また、以前は60歳で定年を迎えることが多かったのですが、年金の支給年齢の上昇といった社会情勢もあり、60歳以降も働きたいと希望する人が増えました。
仕事の質が重要視されるようになった
仕事には時間で評価されるものと成果で評価されるものがあります。高度成長期からバブル期までは時間で評価される製造業が盛んでしたが、バブル崩壊とともに大量生産大量消費の時代は幕を下ろします。製造現場にはロボットが導入されるようになり、人の仕事は知的労働やサービス業が中心に。自発的に頭を使って働く仕事が増え、時間よりも仕事の質や成果が重要視されるようになりました。
共働き世帯が増加した
それまでサラリーマンと専業主婦家庭が多数を占めていた日本ですが、バブル崩壊後の男性の正社員率の減少と賃金の低下にともなって、共働き世帯が増加します。離婚やひとり親世帯も増え、女性が社会進出するにともない課題となったのが仕事と家事育児の両立です。
国として取り組み始めたワークライフバランス
多様化する価値観や変化する社会にともない、行政や民間企業でも少しずつワークライフバランスを支援する取り組みが始まりました。
基本となる男女雇用均等法
ワークライフバランスは、男女にかかわらず仕事と生活のバランスをとって豊かに生活を営むための指針です。ワークライフバランスを重要視する現代において、男女平等が制度として制定されていることをまず知っておきましょう。
男女雇用機会均等法は、日本国憲法の「両性の(法の下の)平等」を実現するため1986年に施工されました。この法律は、職場において性別による差別をなくすために作られ、性別を問わず労働者が均等な雇用の機会を得られること、仕事で均等な待遇を受けられることを掲げています。
具体的には、事業主は、募集・採用・配置・昇進・降格・教育訓練等・福利厚生・職種や雇用形態の変更・退職の勧奨・定年・解雇・労働契約の更新において、労働者の性による差別的扱いをしてはいけません。
育児・介護での休業が認められた
1992年に「育児休業法」が施工、1995年に「育児・介護休業法」と改正されました。その後、誰もが働きながら育児や介護を行うことが重要な時代になり、時代のニーズにより人々が育児・介護休暇を取得しやすいよう改正が重ねられ、直近では2017年に改正が施工されています。
育児休業は「子を養育する労働者が法律に基づいて取得できる休業」で、原則「1歳に満たない子を養育する労働者」であれば男女ともに取得できます。さらに一定の条件があれば育児休業の延長も可能。具体的には認可保育園への入所申し込みしたにもかかわらず入所できなかった場合です。入所不承諾通知書などを提出すると、1年6カ月まで延長でき、さらに1年6カ月の時点でまだ入所できなかった場合には2年まで延長できます。
介護休業は、男女に関わらず「要介護状態にある対象家族を介護するひと」であれば取得できます。同一の対象家族一人につき通算93日まで取得することができます。また2017年の法改正で、3回を上限として93日の介護休業を分割取得できるようになり、これまで1日単位での取得だったのが半日単位で取得できるようになりました。
ワークライフバランス憲章が策定
バブル崩壊後、多様な働き方や生き方が生まれ、国としても早急に対応しなければならない社会情勢が生まれました。2007年に内閣府によりワークライフバランス憲章が策定され、「仕事とプライベートの両面を豊かにする社会」づくりという目標が国を挙げて掲げられました。内閣府による「仕事とプライベートの両面を豊かにする社会」とは以下のとおりです。
【国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会】
本来人間は、仕事だけではなく家庭や地域での人間関係のなかで成長しながら生きていくものです。家族や地域との関わりは、仕事だけでは得られない経験をもたらしてくれます。まさに今、これまでの仕事と私生活のバランスを取りづらい社会から脱皮し、仕事とプライベート両面を豊かにする社会へと大きな転換期を迎えているとも言えるでしょう。
ワークライフバランスとは
ワークライフバランスは、仕事とプライベートのどちらも手放さず大切にするというスタイルであり、どちらか一方を犠牲にするものではありません。仕事と生活はウィンウィンの関係。相互作用によりさらに生きる意欲が湧いてきます。
生活と仕事との調和のこと
そもそも仕事と生活は密接に関わりあっているものです。たとえば仕事がはかどれば私生活も楽しめる、逆に生活が充実していると仕事もうまくいく、という風に、両者は相乗効果をもたらす関係性にあります。ただし、これまで仕事だけ、家事育児だけをおこなってきた人からすると2つのバランスを取るのは難しいもの。
仕事上での責任と、子育てや介護など自分の時間が持てるバランスを保つためには、ひとりひとりの意識改革も必要です。
多様な働き方が実現できる
ワークライフバランスを整えると、たとえば育児に専念したいときや親が歳をとり手助けが必要なとき、個人のライフスタイルやライフサイクルに応じて仕事との両立ができるようになります。子供を授かったら仕事を諦める、育児や介護など長時間勤務が遂行できない状況になったら退職する、といった二者択一から、もう少し長い目で人生や仕事を考えることができます。
例えば、今は無事に子供を産み育てることに重きを置くが数年後にはまたバリバリ働きたいといった女性や、親の介護で有休を使い果たして途方に暮れている男性。それぞれのターニングポイントに寄り添いながら、仕事と生活どちらも手放さずに人生を歩んでいくことができるでしょう。
内閣府が具体的に示す内容は3つ
内閣府が定めるワークライフバランス憲章には、仕事と生活の調和が実現した社会を目指すにあたり、3つの具体的な柱が記されています。
【参考:http://wwwa.cao.go.jp/wlb/government/20barrier_html/20html/charter.html】
就労による経済的自立が可能な社会(内閣府憲章より)
バブル崩壊後、非正規雇用の人が増え経済的な自立が難しいという問題を打開しようという考えです。また、子育てや介護と仕事が両立できる社会の実現が盛り込まれています。
健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会(内閣府憲章より)
仕事の質を重視し、長時間労働からの解放を掲げています。確保できる時間の充実により、ボランティアや趣味といった楽しみも大切にした暮らしの実現を目指しています。
多様な働き方や生き方が選択できる社会(内閣府憲章より)
女性や高齢者にも平等に働く機会が与えられること、生活ステージに応じて選択できる働き方があることは、これからの社会に必要不可欠です。ライフスタイルは変化するものです。視野を広げてそのときの出来事に対応できれば、今より少し幸せに暮らせるのではないでしょうか。
コストではなく投資と考える
企業にとって、ワークライフバランスを積極的に採用することは、優秀な人材の確保や定着を高めることに繋がります。さまざまな制度を整えるためには初期経費がかかりますが、出費を単なるコストではなく将来への投資と前向きにとらえることが大切です。
ファミリーフレンドリーからライフワークバランス概念へ
ファミリーフレンドリーとは、仕事と育児・介護を両立するための環境や制度を整える「両立支援」を意味します。とてもよい取り組みなのですが、「家族を支援する」に重きを置いた考え方だったので、女性の子育て支援を対象とするものでした。
ワークライフバランスは、性別や年齢に関わらず仕事と生活を豊かにするというもの。一部の人や女性に限ったような考え方ではなく全ての人を対象とすべきという考え方にステップアップし、より視野を広げた自由な概念です。
男女均等という考え方
男女は、性別に関係なく評価される機会が与えられるべきであり、仕事を与えられるべきでです。日本では1985年に男女雇用機会均等法が策定され、性別による仕事上での差別が禁止されました。ですが、残念ながら、いまだ男女のあいだには仕事上の格差が存在するのが現状です。
男性はただただ働き、女性はとにかく家事育児をする、という時代から、どちらの性も家庭や子育て、趣味やボランティアを楽しみながら仕事を両立させ豊かに人生を歩む時代への変換期。どちらかの性に負担を押し付けるのではなく、お互いを尊重しながら協力し合いよりよい暮らしを実現するために、仕事上での男女均等という考え方はとても重要です。
誤解されやすいワークライフバランス
まだまだ聞き馴染みのないワークライフバランスという言葉。誤解されやすい側面について具体的に見ていきましょう。
女性のために導入されたわけではない
仕事と生活のバランスというと育児を思い浮かべる方も多いかも知れません。また、育児というと女性だけのものという捉え方があるのも事実。ですが、ワークライフバランスは、老若男女すべての働くひとへの指針です。
たとえば、男性が育児休業を取ることも立派なワークライフバランス。女性がスキルアップを目指して自己啓発のための時間をとるのも大切なワークライフバランスです。性別や年齢に左右されることなく、さまざまな働き方や生き方を選択できるのがワークライフバランスなのです。
仕事とプライベートを切り離すものではない
ワークライフバランスは、仕事とプライベートの両面を大切にする施策です。人間の健やかな暮らしのなかで、仕事と私生活は切っても切り離せないものです。仕事の充実のためのプライベート充実、プライベート充実のための仕事の質の向上など、どちらも重要。比べられるものではありません。
ワークライフバランスによる企業のメリット
ワークライフバランスは、雇用されている者だけにメリットのある施策ではありません。企業がワークライフバランスに取り組むメリットについて考えてみます。
女性の定着
育児休業制度など政府による法整備がなされているにもかかわらず、妊娠・出産を機に退職する女性はいまだ60%を占めています。もちろんなかには、育児に専念したいという方もいらっしゃいます。ですが保育施設への入園ができない、現実的には復職後の両立が難しい、といった理由でやむなく仕事を諦める女性も多いのが現実です。
企業がワークライフバランスに積極的に取り組みシステムを整備すると、これまでなら子育てにより離脱してしまっていた女性が働き続けられ、長期的に見れば十分な人材確保となります。さらに、女性の社会進出にともない、女性に特化したサービスや商品の開発は目覚ましいもの。女性が生き生きと会社で働き続けられることは、企業にとって大きなメリットです。
優秀な社員の確保
ワークライフバランスを推奨している企業は、社員を大切にしているイメージが持たれます。仕事と生活をどちらも意欲的におこないたいという先進的な考えを持つ優秀な人材が集まってきます。また、働き続けられる状態を作ることで、育児や介護などを理由に離職しなければならなかった社員が働き続けられ、せっかくの優秀な人材を手放さずにすみます。
離職率の低下によるイメージアップ
就職や転職活動をするなかで、その企業の離職率というのは気になるところ。離職率が高い企業は何か問題があるのではないかと敬遠されてしまうこともあるでしょう。社員の確保がうまくいくようになれば離職率が下がります。離職率が下がることにより、働きやすい会社として認知されイメージアップに繋がります。
仕事の質の向上
誰でもはじめは新しい仕事をスイスイとはこなせません。企業ははじめのうち社員教育にコストをかけます。途中で社員が辞めてしまうと、またはじめから教育しなければなりません。長く働く社員が増えることで仕事の効率が上がります。教育にかけたコストも、長期的な目で見ると会社にとってもメリットとなります。
制度の充実が会社のイメージアップに
ワークライフバランスを推奨し、ライフプランに合わせた働き方を選べる会社は、働き続けやすい会社といえるでしょう。働き続けやすい環境を作ってくれることは、会社が社員を大切にしたいと考えている証拠と捉えられ、会社のイメージアップに繋がります。
一人一人に対するワークライフバランスのメリット
政府が憲章を掲げ、取り入れる企業が増えてきているワークライフバランス。では、労働者ひとりひとりにとって具体的なメリットとしてはどのようなものがあるのでしょうか。
出産しても働き続けられる
女性目線で見ると、なんといっても出産後も働き続けられるのは最大のメリットであり魅力です。子供を授かるということはとても大きなライフイベント。子供か仕事か、などという二者択一は本当は間違っているのではないでしょうか。
子供は社会の宝物。ワークライフバランスを取り入れる企業が増え、気後れせずに育児休暇を取得できるなど、女性が安心して子供を産める環境が整えば未来はさらに明るくなるでしょう。また、せっかく制度があってもなかには棚の上のぼたもちという現実も。制度を利用する女性社員が増えることで、さらに周りも利用しやすくなり活気に満ちた職場が生まれることでしょう。
男性も育児休暇が取得できる
従来、日本では男性は仕事、女性は家事育児を担うという分担が主流でした。女性の社会進出に伴いさまざまな法律ができましたが、まだまだ女性に負担がかかっている現状があります。
実は、男性の約30%は育児休業を取得して育児に参加したいと考えているのだとか。ただし、実際にはなかなか取得できないのが現状で、先進国のなかでも日本男性の家事育児に費やす時間は最低ラインにとどまっています。
ワークライフバランスは性別に関係ない制度です。女性が出産後に夫も休暇を取得し一緒に育児ができるような、子育てに平等に取り組む社会づくりを目指せる施策です。
女性もバリバリ働ける
仕事や家事育児は男女平等のものです。ただし出産に関してはその性格上、女性に生活の変化や負担がもたらされます。そのためこれまで女性は、結婚や出産と仕事のはざまで悩んできました。
ワークライフバランスが社会に浸透して、誰もが当たり前にライフイベントに応じて仕事のペースを選択できるようになれば、女性は結婚や出産に気後れする必要がなくなります。男性も女性もバリバリ働ける健全な社会に繋がります。
介護にも前向きに取り組める
高齢化社会において介護は切り離せない問題です。介護は、いつからいつまでという期間がなく終わりを予測することができません。また、兄弟姉妹の少ない家庭も多く、ひとりの手に介護負担が大きくのしかかることもあります。なかには仕事と介護との両立が難しく介護離職に追い込まれることも。介護離職は、個人のみならず会社にとっても国にとっても大きな損失です。
介護は誰もが直面する可能性のあるものです。ワークライフバランスが整い、仕事と介護を両立できることで介護が当たり前の社会になれば、より前向きに仕事や介護に取り組めます。
モチベーションの向上
ワークライフバランスが保たれ、プライベートが充実すると仕事のやる気もアップします。とくに男性は私生活の充実度が仕事のモチベーションアップに繋がりやすい傾向にあるという調査結果も。
またワークライフバランスがとれると、自己啓発にかける時間の余裕ができます。仕事というのは職場にいるときのみではなく、個人個人の私生活の体験や充実度から生み出されるものです。
ワークライフバランスの取り組み例
国や企業によるワークライフバランスを目指した取り組み例について具体的に見ていきましょう。制度は社会情勢により変化します。常に新しい情報を得て、自分に合った制度を上手に利用しましょう。
男女ともに取得できる育児休暇
ワークライフバランスの考え方では、女性だけでなく男性も育児休暇を堂々と取れるかどうかが大きなポイントです。2010年には「パパ・ママ育児休業プラス」という特例制度がスタートし、男性の育児休業や育児参加を促しています。近い将来、大黒柱が母というのも当たり前の社会になるかも知れません。
育児だけでなく介護でも必要な時短制度
3歳未満の子供を育てる労働者は、短時間勤務を選択できるという法律があります。短時間とは原則一日6時間。子供の保育施設への送り迎えや予防接種など、これまでと同じ時間では勤務を続けられないといった事例に配慮したもので、子供が産まれ、職場復帰する男性・女性ともに必要な制度です。
時間短縮制度は、育児のみならず介護においても取得可能です。とくに介護は育児とは違い、ゴールが見えません。退職や休業ではなく、両立を目指した施策の配備が必要です。
時間を自分で管理するフレックスタイム
出勤や退社の時間を管理する時間短縮ではなく、全体の勤務時間を自分で管理するのがフレックスタイムです。決められた総労働時間のなかで、労働者が自分で出勤や退社の時間を決めることができます。たとえば、子供の保育園へのお迎えの時間に間に合うように退社時間を早める、朝の数時間は家族の介護が必要、というときに便利です。全体の時間を管理でき、時間の有効活動にもつながります。
時間や場所にとらわれないテレワーク
トヨタが導入して話題になったのがテレワークです。テレワークとは在宅勤務のこと。日本テレワーク協会では「テレワークとはITシステムを利用し場所や時間にとらわれない働き方」と定義づけていて、働き方の選択肢の一つとして注目を浴びています。
また、テレワークに特化したクラウドソーシングサービスもどんどん広がりを見せています。たとえば出社退社時間の決まっている会社には勤められないけれど、朝の数時間、昼の数時間なら働けるという方も、サービスを通じて仕事をすることができます。仕事というのは、お金を稼ぐ手段でもありますが、やりがいや社会との繋がりを感じられる大切な活動です。
テレワークは、通勤時間の削減や交通費の削減など、企業と労働者どちらにもメリットのある働き方です。また、育児や介護との両立や障がい者雇用の側面でも魅力的で、今後さらに増加する働き方のひとつでしょう。
副業が可能に
生活するのに必要なのがお金。お金を得るために働くのですが、度を越すと今度は時間のゆとりがなくなります。必要分のお金を稼ぎながら、育児や趣味などゆとりを持った暮らしをしたい、というときに思いつくのが副業です。ネットビジネスやテレワークの出現で誰もが比較的簡単に副業できる時代に突入しました。最近では、副業が可能な企業も増えていて、働き方の選択肢のひとつとして認知されはじめています。
長期休暇が取得できる
企業のなかには、リフレッシュ休暇を導入し、長期休暇の実現を目指すところもあります。また、逆に有給休暇を1時間単位でフレキシブルに取得できる制度を配した企業も。
ひとはプライベートが充実することで仕事のやる気にも繋がります。長期休暇を取得して海外旅行をするのもひとつ。制度として取得できるのであればうれしいとの声も多く、今後さらなる広がりを見せるのではないでしょうか。
女性に嬉しい取り組み例
ワークライフバランスへの取り組みのなかでも、女性に嬉しいシステムの導入事例を見ていきましょう。出産や育児へのよりよい制度が整えば、低迷している出生率の増加も期待できるかも知れません。
妊娠中の体調不良時に休みが取れる
妊娠中は、悪阻(つわり)だけでなく急に体調が崩れることも珍しくありません。少し調子が悪いと思っても休むのをためらって無理をする女性も少なくないのだとか。そんな女性に嬉しいのがマタニティ休暇制度のある企業です。マタニティ休暇は、妊娠による検診受診時や、妊娠による体調不良の際に取得可能な休暇。妊娠に対して会社からの協力があるのは心強く、なにより制度があれば気兼ねなく休みを申請できます。
妊娠期の定期健診に休みが取れる
母子保健法に基づく妊産婦検診を受診するときに休暇を取れる制度を採用している企業もあります。産前休暇まではきっちり働きたいと思っている女性も多く、健診を理由に有給は使い難い現状に配慮したもの。妊婦検診は一般的に平日におこなわれるので、土日祝しか休みがない会社の場合にうれしい制度です。
出産時に夫が休暇を取れる
配偶者の出産時に夫が休暇を取れる出産サポート休暇を導入している企業があります。近年増えている「立ち会い出産」に嬉しい制度です。昔は大家族で生活していて妻の出産のときには両親や親戚などほかに立ち会えるひとがいましたが、核家族化が進み、出産のときに頼れるのは夫だけという環境も珍しくありません。出産は命がけ。生命の誕生に立ち会える機会は、男性にとっても大きな経験となります。
保育所の設置
公立私立の保育施設がありますが、地域によっては定員オーバーで待機児童となることもあります。また決まった保育施設に通わせていても、事情により保育施設に預けられない日もあるでしょう。そんなとき自分の働く会社に保育所があれば、父親や母親は安心して仕事ができます。
子供が病気になっても安心
子供というのは急に病気や怪我に見舞われるものです。とくに感染症などの病気の場合、通常の保育施設は休まなくてはならず、働く親にとって悩ましい問題です。
会社の保育園が病児も預かってくれる
会社に保育施設があるのみならず、その保育施設で病児・病児後保育を担ってくれる企業があります。通常の保育園では病気の子供は帰宅することになるのがほとんどです。保育園から連絡があれば、仕事を切り上げて迎えに行かなくてはなりません。会社の保育施設が病児保育もしてくれるのはありがたい限りです。
気兼ねなく休みが取れる
子供はよく病気をするので、その度に急に休まなくてはなりません。そんなときに取得可能な看護休暇を定めている企業があります。急な休暇申請というのは周りに気後れするもの。制度として休めるのであれば会社にも言いやすく、会社や周りがそういうものだと理解してくれているのはうれしいことです。
ワークライフバランスを後押しする運動
社会の変化とともに生まれたワークライフバランスという考え方。すべての働く人々にとってメリットとなる施策であり、さらに浸透させるため後押しする運動が沸き起こっています。
ワークライフバランス推進会議の発足
2006年には「ワークライフバランス推進会議」が発足されました。ワークライフバランスという言葉の認知度をあげるとともに、政府のかかげる一億総活躍社会を目指し、経営者や労働組合などが手を組んでワークライフバランスの取り組みを行っています。
ワークライフバランス大賞も決定
2007年からは毎年、各企業のワークライフバランスへの取り組みを評価し表彰する「ワークライフバランス大賞」が発表されています。たとえば2017年のワークライフバランス大賞受賞のあいおいニッセイ同和損保株式会社では、社長自らが会社のワークライフバランスへの環境整備への取り組みを表明し、柔軟な生き方への支援制度や有給休暇取得実績数の増加を図っています。
また同じく2017年のワークライフバランス大賞を受賞した西部ガス株式会社では、過去5年間の全社の時間外労働時間を約25%削減しました。その結果社員の社会貢献活動への参加や、学びなおしの機会が増加しました。
キャッチコピーでわかりやすく伝える
ワークバランス推進会議では、ワークバランス大賞とともに、全国から募った「ワークバランス標語」も発表しています。ちなみに、2014年の入選作品は下記のとおりです。
- 目指すのは 仕事も私事も デキる人 (東京都女性・会社員)
- 気持ちよく 休みをとりあい 輝くチーム (東京都女性・会社員)
- 良い仕事 するなら大事なリフレッシュ (埼玉県男性・会社員)
- 作ろうよ! 仕事と家庭の時間割 (東京都女性・会社員)
- もう帰るの? いやいや君は まだいるの?(東京都男性・会社員)
これから進めていきたい取り組みを分かりやすくスローガンとして掲げるのはとても大切なこと。キャッチコピーにすることで、一言で広くワークライフバランスの重要さを伝える、気づかせることができます。
企業にも個人にもメリットばかりの制度である
ワークライフバランスは、企業にとっても個人にとってもいいことづくしの制度です。本当はもっと子供を過ごしたい、家族と会話したいと思っている男性は多いもの。また家事育児に泣く泣く専念しているけれど内心では働きたくてうずうずして焦っているという女性もいるでしょう。
制度が整備されワークライフバランスの保たれた社会になれば、男性も女性も今よりずっと生きやすくなるでしょう。育児や介護にまつわる社会問題は、時間や気持ちのゆとりのなさから生まれることも。反対に言えば、時間を有効に活用できれば簡単に解決できる問題も含まれているのです。
個人がより人間らしく成長しながら、私生活で培った経験や能力を仕事に活かし、エネルギッシュにポジティブに仕事に携わることができれば、企業やひいては国家にとって大きなメリットです。高度成長期、バブル期を経て日本は新しい時代へと突入しました。ひとりひとりの手で、誰もが生き生きと人生を歩めるワークライフバランスの整った社会を目指しましょう。