薬剤師になるためには。薬剤師法についてはじめて学ぼう
薬剤師法は日本の法律
薬剤師全般の職務や資格などを規定した、厚生大臣が認可する国家資格職のひとつです。薬事法により、薬局の管理責任者として必ずおかなければいけないと定められています。
有機化学や無機化学などの化合物に関する基礎知識から、体内での薬の作用、病気や治療まで幅広い知識が必要となり、全ての薬品の服薬説明ができなければいけません。
調剤に関わる多くの法律が薬剤師法に定められています。
参考資料:http://www.gaiki.net/lib/old/yak_law608.html
大きく4つに分かれる薬剤師法について
調剤は原則として薬剤師のみが行える業務です。そのため、調剤に関わる多くの法律が薬剤師法に定められています。1925年に旧薬剤師法が制定され、1960年に改めて交付された薬剤師法には、全28条の条約が定められています。その中でも大きく4つに分けて内容をまとめてみました。
国民の健康な生活を確保する「任務」
薬剤師法の第1条では、「薬剤師は調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることのよって、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保するものとする」と規定されており、任務についてまず始めに定められています。
内容はそのままですが、分かりやすく書くと「薬剤師は調剤や医薬品を通じて、国民の健康増進につなげる」という任務があります。
名簿登録で有効になる「免許」
薬剤師になるには、国家試験に合格し、薬剤師名簿に登録しなければいけません。その後に厚生労働大臣より免許証が交付されます。試験に受かるだけでは薬剤師としては認められず、名簿に登録された時点で有効となります。
未成年、心身の障害がある者は交付されない
罰金以上の刑に処せられた者、または不正の行為があった者も免許は交付されません。
薬剤師免許申請は保健所で行う
合格発表後に、速やかに手続きを行わなければいけません。診断書、戸籍謄本などが必要です。名簿には本籍地都道府県名、氏名、生年月日、性別が記載されます。
登録済証明書を交付してもらう
申請手続きを行った後、免許証が届くまでは数か月かかります。仮として、登録済証明書を交付してもらうことを忘れないようにしましょう。
2年毎に申請する「届出」
薬剤師法第9条により、厚生労働省令で定める2年ごとの年の、12月31日現在における氏名、住所などを翌年の1月15日までに申告する義務があります。休職中や海外出張などであっても届出なければいけません。日本薬剤師会のホームページからでも書類を受け取ることができます。
調剤を主とする「業務」
薬剤師は、原則として薬局でしか業務をしてはいけなく、正当な理由がない限り調剤に応じる義務があるなど、業務に関してもたくさんの規定が定められています。他の規定についても代表的なものをまとめてみました。ただし、自然災害などの場合は例外が認められる場合もあります。
薬剤師でない人は調剤してはいけない
病院、診療所の場合や、自己の処方せんにより自ら調剤をする場合などは例外があります。また、獣医師が自己の処方せんにより自ら調剤する場合も例外があります。
処方せんに基づいた調剤をしなければならない
処方せんに不明確な点があれば必ず問い合わせし、質問を受けた側も適切に回答をしなければいけません。また同意を得た場合を除くほか、変更して調剤してもいけません。
医薬品の使い方は容器や袋に記載しなければならない
処方せんに記載された氏名、用法、用量などを記載しなければいけなく、必要な情報を霊提供し、薬学的知見に基づく指導も行わなければいけません。
調剤に関する記録は保管しなければいけない
調剤済みとなった処方せんは、調剤済みとなった日から3年間保存しなければいけません。また、調剤済みの旨や年月日などを記入し、署名をしなければいけません。
薬剤師の国家試験について
薬剤師になるためには、薬学系の大学で学んだ後、知識や技能の確認として国家試験を受けなければいけません。在学中の生徒は、大学で実施される試験に合格しなければ、国家試験には受験できないため、とても難易度の高い試験です。国家試験の受験料は6800円です。
H18改正の薬学教育について
医療義務の高度化などの社会的ニーズに基づき、薬学教育の見直しが行われました。医療の担い手としてふさわしい薬剤師を養成するのが目的で、薬剤師法から国家試験制度まで幅広く改正されています。また、一般用医薬品の販売ルールも新しく制定され、調剤に関する条文も改正されています。
薬学教育における学部の修業年限は6年
学部の修行年限が4年から6年に延長されたことより、医療の中核として活躍できる人材を増やし、服薬指導や薬歴管理、薬害防止の働きかけを可能にします。国民に信頼される医療や保健衛生の担い手として、また研究者として、企業や研究機関などでも活躍できる道にもつなげています。
年に1度の国家試験
1987年までは年2回行われていましたが、1988年より年1回に変更しています。毎年3月に2日間の日程で行われ、「物理・化学・生物」「衛生」「薬理」「薬剤」「病態・薬物治療」「法規・制度・倫理」「実務」の7領域と、薬学に関する幅広い知識が問われる試験内容となっています。
H30年の受験者数と合格率
厚生労働省のホームページでは、毎年薬剤師国家試験の出願者数、受験者数、合格者数、合格率を発表しています。都道府県や大学別にも集計されているので、一度覗いてみるのもよいでしょう。
受験者数13,579名のうち新卒者は8,606名
受験者のおよそ3分の1が再受験者であることから、試験の難易度がより分かる結果となっています。6年間、薬学をみっちり勉強している人でさえ落ちてしまう国家試験ですので、安易な気持ちでは決して合格できない試験でしょう。
全体合格率70.58%で新卒者合格率84.87%
6年制大学の既卒者や4年制大学卒の受験者の合格率が50%を切ってることから、6年制大学の新卒者がいかに高いことが分かります。大学でのサポート体制を上手に使い、自己ベストを出せる環境で勉強することがとても重要です。
参考資料:http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000199343.html
免許の交付と届け出について
国家試験の合格者は、各地の薬剤師国家試験運営臨時事務所に掲示して発表するほか、合格証書が郵送されます。その後は速やかに現地所管轄の保険上で手続きを行う必要があります。
国家試験合格後は薬剤師名簿登録で免許証交付
提出する書類一式は、出願時に在学中の大学からもらえますが、なんらかの理由で手元にない人は各都道府県に問い合わせします。必要なものは「薬剤師免許申請書」、「発行1か月以内の診断書」、「戸籍謄本」、「登録済み証明書のハガキ」、「登録されていないことの証明書」です。また、登録税として3万円(収入印紙)が必要となっています。
「登録済み証明書」とは、薬剤師免許証が手元に届くまでの代わりとなるものであり、厚生労働所で発行してもらうのがよいでしょう。
「登録されていないことの証明書」とは、薬剤師試験時に配布される用紙に記入することにより、法務局で発行してもらえます。
2年毎に都道府県知事を通して届け出
免許の更新ではなく、医療統計として2年毎に厚生労働大臣に届け出る必要があります。
偶数年の12月31日現在の状況を翌年1月15日までに届け、12月31日現在における住所、従業地、従事している業務の種別等を届け出ます。仕事をしていれば、周りの人が届け出作業をしているので忘れる事少ないと思いますが、休職中は特に忘れやすいので注意が必要です。
薬剤師の業務と心構えが大切になる
薬剤師は、医薬品全般の幅広い知識をもつ「薬」のエキスパートです。一般用医薬品から医療用医薬品まで、全ての薬を販売できます。薬局や医療機関だけではなく、学校での環境衛生管理や、医薬品の研究や開発業務など活躍できる場所は多くあります。
ただし医療に携わる以上、不正行為があった場合はただちに資格は取り消され、それ以降も職につくことはできません。薬剤師への道のりは決してたやすいものではありませんが、薬剤師法を充分に理解した上で、責任感をもって業務に携わることが何よりも重要です。