失業保険受給中の健康保険の選択肢を紹介。扶養には入れる?
これを読めば失業保険受給中の健康保険のことがまるわかり
自分の夢を叶えるため、あるいは前職に疲れ切って、それとも会社の経営が悪化して会社の都合で、様々な事情から次の就職先が決まっていない状態で退職したけれども、生活費が不安。そんな時の強い味方が失業保険です。
一方、病気になって病院にかかる際の強い味方が健康保険。会社員として働いている場合は会社が加入している社会保険の健康保険に入っていることでしょう。しかし退職したらどうなってしまうのでしょうか。このページでは失業保険受給中の健康保険について紹介します。
失業保険を貰っている間の健康保険
失業保険と健康保険の関係
失業保険とは雇用保険法に定められた「失業等給付」のことを指します。退職日より前の2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して12カ月以上ある人で、ハローワークにて求職の申し込みを行い就職活動を行っているにも関わらず就職できない「失業状態」の人を対象に、就職活動を行う間の生活費の不安を軽減するために支給されるものです。
失業保険をもらうには、お住まいの地域のハローワークに行って求職の申し込みを行った後、雇用保険被用者離職票を提出します。そして受給説明会に参加する必要があります。受給期間は90日からで勤続年数や年齢、特定理由の有無によって変更があります。支給される日額は退職前6カ月の給料を180で割った日額の50~80%です(上限あり)。受給期間中は4週間に1度、「失業認定申告書」「雇用保険受給資格者証」を提出し、失業の認定を受ける必要があります。
健康保険とは健康保険法に定められている労働者とその被扶養者の病気・怪我等に関して保険給付を行うものです。病院に3割負担で診てもらえるのもこの健康保険のおかげです。労働者でない人は国民健康保険に加入します。公務員の場合は共済組合がこれを担います。
失業保険と健康保険には「失業後の生活の保障」「病気や怪我の保障」という違いがあります。両者は別の物ですが、会社員の場合は入職時に雇用保険と会社が加入する健康保険の両方へ加入しています。退職したら雇用されなくなるわけですから雇用保険は支払いません。しかし健康保険はどうなるのでしょう。
通常の健康保険の切り替え方法
会社が加入している健康保険が有効なのは退職日当日までです。退職日の次の日からは
1.前職の健康保険を任意継続する
2.扶養者の健康保険の扶養に入る
3.国民健康保険に加入する
の3通りから選ばなければなりません。
1.前職の健康保険を任意継続する
この場合は協会けんぽを例にあげると退職から20日以内に協会けんぽの都道府県支部に「健康保険任意継続被保険者資格取得申出書」を提出しなければなりません。任意継続は退職日以前に2か月以上健康保険に加入している場合に可能で、退職後2年間有効です。
健康保険の場合は扶養家族が何人いても保険料は一定のため、自分に扶養家族がいる場合は、扶養家族の分の保険料を払う必要がある国民健康保険よりも任意継続がお得です。ただし、在職中は会社が負担してくれていた分の保険料も自分で支払う必要があるので、保険料の負担額は増額します。
任意継続しながらでも、失業保険は受給できます。
2.扶養者の健康保険の扶養に入る
この場合は「源泉徴収票」等を用意して扶養者を雇用している会社に申し出る必要があります。年収が130万円未満で、扶養者の年収の2分の1未満であることが条件です。この場合の年収は退職後1年間の見込み年収で決まります。扶養者には色々な条件がありますが、多くの場合両親のどちらかか配偶者です。
3.国民健康保険に加入する
1と2のどちらにも当てはまらない場合は国民健康保険に加入することとなります。退職から14日以内にお住まいの市区町村役場・国民健康保険の窓口に、「資格喪失連絡票」、身分証明書、印鑑を持って手続きに行きましょう。万が一期限を過ぎても、手続きは可能。
「私はまだまだ若いし病気なんてしないから保険は必要ない」と考えるのはやめましょう。日本は国民皆保険の国、国民全員が何らかの健康保険に加入する義務があります。そのため、他の健康保険の加入資格を失った時点で国民健康保険に自動加入となります。前述の手続きをしない場合は、国民健康保険の保険料の徴収は開始されませんが、保険料を納めていない期間もあとからさかのぼって保険料を納める必要がありますし延滞金が発生します。
人間いつ病気や怪我をするかわかりませんし、万が一滞納が長引いた状態で医療機関にかかった場合は全額自己負担です。ただでさえ収入が途絶える失業中に医療費を全額負担しなければならなくなったら大きな痛手です。
失業保険が貰えるまで扶養に入る
ここからは「扶養者の健康保険の扶養に入る」の場合の話をします。自己都合で退職した場合は失業給付の受給資格決定日から受給開始日まで7日間の待機期間と、3カ月の給付制限期間があります。この間は無給となりますので、扶養に入ることが可能。
ちなみに、会社都合の退職退職または特定理由離職者の場合は給付制限期間は無く、7日間の待機期間の後に受給開始となります。
失業保険を受給し始めたら健康保険の扶養を外す
失業保険を受給し始めたら、受給額によっては見込み年収130万円を超えてしまう計算になります。具体的には失業保険受給日額が3,612円以上の場合、健康保険の扶養を外れる必要があります。「被扶養者(異動)届」を扶養者の職場に提出しましょう。
失業保険の受給が終了した後、再び扶養に入りたい場合は「雇用保険受給資格者証の写し」「被扶養者(異動)届」等を扶養者の職場に提出して手続きをする必要があります。
国民健康保険に入る2つのパターン
国民健康保険に入るには、退職後に国民健康保険へ入るパターンと、一旦扶養に入った後に失業保険が受給されてから入るパターンの2つがあります。退職後に入るパターンについては「通常の健康保険の切り替え方法」の項目内で説明していますのでそちらを参照してください。
失業保険受給日額が3,612円以上の場合、健康保険の扶養を外れる必要があるため、失業保険受給開始の際に国民健康保険に加入します。その場合はお住まいの市区町村役場・国民健康保険の窓口に雇用保険受給資格者証を持って手続きに行きましょう。
受給額次第で国民健康保険へ切り替えなくてよい
失業保険の受給額が日額3,611円以下の場合は見込み年収が130万円未満という計算になるため、国民健康保険へ切り替えずに、扶養に入ったまま失業保険の受給が可能。ただし、扶養者が加入している健康保険ごとに独自の基準がある場合もありますので、必ずそれぞれの健康保険に問い合わせることをおすすめします。
受給額が低い場合扶養家族で社会保険に入る
扶養家族として扶養者の社会保険に入ることができた場合は、保険料にかなりのメリットがあります。扶養に入る場合は扶養者の保険料は変わりませんので、扶養から外れて国民健康保険の保険料を払うよりお得といえます。失業保険を受給できることになったら日額の欄は要チェック。
受給中に結婚をした時の健康保険と失業保険の行方
受給期間中は扶養から外れて国民健康保険に
前述のとおり、失業保険受給日額が3,612円以上の場合は配偶者の扶養に入ることはできませんので、国民健康保険に加入している必要があります。受給日額が3,611円以下の場合は配偶者の扶養に入ることができますので、配偶者の勤務先に届け出ましょう。
ここまではおさらいです。
結婚後も働く意思があれば貰える
最初に述べたとおり、失業保険は再就職する意思がある求職者に給付されるもの。つまり、結婚後も再就職して働く意思があるならば失業保険を受給できます。結婚して姓や住所が変わった場合は雇用保険受給資格者証と保険料の振込口座の内容を変更する必要がありますので、ハローワークに申し出ましょう。
なお、「結婚して、しばらくは専業主婦として家事に専念したい」という場合はもらえません。再就職する意思がないのに失業保険を受給した場合は不正受給となりますので注意しましょう。
引越しをしたら特定理由離職者に該当する
なお、結婚により住所が変わったため通勤が困難になり退職した場合は、特定理由離職者に該当します。特定理由離職者は3カ月の給付制限期間がなく、7日間の待機期間の後に失業保険を受給できます。
ハローワークでの初回の手続きの時に退職理由を必ず説明しましょう。
退職の前に失業保険と健康保険の関係を知っておこう
退職後の健康保険は、前職の健康保険を任意継続する、扶養者の健康保険の扶養に入る、国民健康保険に加入するの3通りがあります。さらに受給される日額が3,611円以下か、3,612円以上かによって扶養に入れるかどうかの違いがあります。
手続きの度に必要な書類を揃えて提出する必要はありますが、手続き自体は難しくありません。退職の前に失業保険と健康保険の関係を知っておいて、必要な社会保障を受けられるように備えておきましょう。