歯科医師の国家試験取得について知ろう。その試験状況と現在の合格率
歯科医師の国家試験は難関になったのか
歯科医師の国家試験は今と昔では異なり、難しいものになってきています。昔と比べ難関になってしまった理由はさまざまですが、転職活動に伴って資格取得を目指している人にとって試験状況の推移を詳しく理解することが重要になってきます。
本記事では全体の合格率の変化と変化の原因を解説します。試験状況の全体を把握することによって具体的な試験対策が組めるようになるため参考にしてください。
歯科医師国家試験の合格率の推移
平成30年と平成29年に行われた試験の合格率と既卒者の合格率を解説します。また、過去において最高の合格率を出した平成15年の試験内容と難易度についてもみていきます。
第111回 歯科医師国家試験の合格率は64.5%
平成30年2月に行われた第111回歯科医師国家試験は、受験者3,159人、合格者2,039人で合格率は64.5%でした。
男女別に見ると、男性は受験者1,924人、合格者1,162人で合格率は60.4%。女性は受験者1,235人、合格者877人で合格率は71.0%と女性のほうが10%以上合格率が高い結果になりました。
既卒者の合格率は44.0%
第111回歯科医師国家試験では新卒者の受験者は1,932人、合格者1,505人で合格率は77.9%。既卒者は受験者1,227人、合格者534人で合格率44.0%とかなり新卒者と既卒者の合格率の幅が大きくなる結果となりました。
既卒者で歯科医師国家試験に臨む場合はかなりの努力が必要なように感じる数字となりました。
前年度も第111回とほぼ同じ合格率
前年度の平成29年2月に行われた第110回歯科医師国家試験も新卒者の合格率が76.9%、全体の合格率が65.0%となっており、平成30年に行われた第111回と既卒者の合格率、全体の合格率共にほぼ同じ結果になっています。
試験内容の変化など大きな変化がない限り、これから歯科医師国家試験に臨むには111回、110回あたりの近しい試験の合格率を参考にするようにしたほうがいいでしょう。
合格率90%を超えたのは第96回
平成15年3月に行われた第96回は受験者3,208人、合格者2,932人で合格率は91.4%でした。平成13年3月に行われた第94回でも合格率90.7%と非常に高い合格率でした。
この平成15年の試験で9割以上の合格率が出てから平成16年以降に行われた試験では、6割~7割の合格率がほとんどになってしまっています。受験者は毎年3,000人前後となっておりあまり変化はありません。
合格率が高かったころは国家試験であっても、その分野についてひと通り理解しているかどうかの「確認試験」といえるような容易な試験だったため、合格率が非常に高くなっていました。
歯科医師の国家試験の出題内容も変化した
歯科医師国家試験の合格率が低下した原因には、新たな出題基準が設けられたり出題方法の変化によるものも要因のひとつになります。近年導入された試験内容と、今後の出題内容の傾向について知っておきましょう。
診療に必要な医学英語が盛り込まれた
平成22年に行われた第103回から診療に必要とされる医学英語として英語問題の出題が導入されました。歯科や人体に関わる単語問題や、問題にも英単語が含まれているものがあります。高い英語力を求められる問題は今のところ出題されていません。
診療に必要とされる医学英語が出題されますが、基本的な英語を理解していることが前提なので過去問題などで対策をとる必要があります。
法医学(法歯学)も導入
平成26年に行われた第107回から法医学(法歯学)が導入されました。第107回は導入されて最初の試験であり、出題の予測が困難だったというのもあり過去最低の合格率である63.3%を記録しました。
法医学が導入される以前の合格率は70%前後のものがほとんどでしたが、導入されてから現在の平成30年までの試験では合格率がすべて65%以下になっている上に数回の過去問をもとに対策を立てなければならないため注意が必要な点でもあります。
高齢化による治療の変化なども出題内容に
出題内容は現代の社会情勢の変化に伴った内容が含まれます。今現在だと高齢化社会が進んでおり、高齢者の人口が高いため患者に高齢者が多いことが予測されます。そのため試験内容にも、老化による疾病構造や診療内容の変化に関する内容が出題されます。
また、その時々によって社会情勢の変化があるため常日頃から社会や経済の動きをある程度把握しておくことによって対策ができる基本にもなるといえます。
多肢選択型問題が年々増加の傾向あり
ここ数年で多肢選択型問題が増加している傾向があります。多肢選択型問題とは、スーパーエックス問題とも呼ばれており、複数の選択肢の中から答えになるものを全て選ぶというもので、ひとつでも別のものを選択してしまったり、選択しなかったりすれば正解にはなりません。
このような問題が年々増加しているため、必然的に難易度が上がってしまっています。合格率が高かった過去においてはマークシート式が採用されていたため、同じような設問であったとしても難易度は今より確実に低かったといわれています。
なぜ難化したのか
歯科医師国家試験の合格率は過去よりも確実に低くなり、さらに科目数も増えているので合格するのにはハードルが確実に高くなってきています。ここ数年で歯科医師国家試験が難化した要因を分析しましょう。
歯科医師の増大に歯止めをかけたい狙い
歯科医師は人気の高い職業のため既に多くの人が歯科医師の資格を取得しています。平成25年の厚生労働省の検討会では歯科医師数が約1万1千人過剰になると推移が出ています。
この歯科医師数の過剰に拍車をかけないためにも新たな歯科医師の養成を1割以上削減する必要があり、歯科医師国家試験を難化することによって歯科医師数を増加させないようにしていると考えられます。
出口を狭くする必要があった
文部科学省は、歯科医師数の過剰を防ぐため大学への定員削減を要請しましたが、多くの大学が入学志願者の減少や定員割れに見舞われ、志願者が減ると入学水準の低下は必然になってきてしまうため各大学がなかなか定員削減がなかなか進まないのが現状です。
歯科医師の入り口である大学への学者数を抑制できないため、出口である歯科医師としての資格、つまり歯科医師国家試験の難易度を上げることによって歯科医師の増加を抑制するようにしています。
内科医よりも多い歯科医師数
医師の中で最も多いと言われている内科医より歯科医師のほうがここ数年で多くなっており、歯科医師の過剰傾向にあります。さらに歯科医師は、ほかの医師に比べて開業をするひとが多くいるため、都心部では歯科医師が集中してしまっているため、過当競争が起こっています。
昔と比べ虫歯は減少傾向にありますが、高齢化が進んでいるため歯周病や摂食障害などの問題が増加傾向にあります。そのため歯科医師が求められる領域が広くなりつつあります。
司法試験に比べると合格率は高い
平成30年の医師国家試験の合格率は90.1%であり、それと比較すると平成30年の歯科医師国家試験の64.5%は合格率がかなり低いため、歯科医師国家試験を通過するのは狭き門と感じます。
一方で資格試験の最高峰と呼ばれる司法試験の平成29年9月に行われた合格率は、25.86%という結果でした。分野が違うため比較対象にはなりませんが、合格率だけで比較すると歯科医師国家試験のほうが遥かに上回っているため合格率が高いように感じます。
歯科医師は狭き門をくぐったことになる
歯科医師国家試験は近年60%代の合格率で、難易度がかなり上がっているため、合格すれば学力はかなり高いという証拠にもなります。難易度の高い大学であっても合格率は高くて80%前後であるため、どのような大学出身であっても歯科医師国家試験に合格すればお墨付きということになります。
その一方で、新卒者と比べ既卒者の合格率はかなり低いためかなりの努力が必要だと予測されます。それを乗り越え合格し、歯科医師免許を取得することによって確かな知識で多くの患者にとって救いとなるものになります。
また、今後さらに試験内容の難化が進む傾向にあるとされているため新たな科目の導入や出題方法の変化などに注意して試験に臨む必要があります。