「帯締めをどう使うのか知りたい」組み紐や飾り紐の基礎知識
帯締めの役割
帯締めは、着物の着付けをするために必要な小道具の一つで、帯を固定するのに用いる紐のことをいいます。浴衣や着物を着たことがある方なら、手に取った経験もあるのではないでしょうか。帯をしっかり固定できるだけでなく、着物のアクセントにもなります。
そんな帯締めの基礎知識や種類、基本の結び方をマスターして、着物をもっと楽しんでみませんか。
帯締めの種類
まずは、帯留めの種類を見ていきましょう。帯留めは使う場面や着物によって、ある程度種類が決められています。特に、フォーマルな場では重視されることもあるので、基本知識として知っておくと便利です。
振袖や花嫁衣装でおなじみの丸ぐけ紐
布で綿をくるんだ紐で、ふっくらと丸みを帯びており、柔らかな印象を持っている丸ぐけ紐。振袖など、華やかな衣装を飾り立ててくれる名わき役です。
かつては、夏用は絽(ろ)と呼ばれる少し透け感のある生地で作り、夏用と夏以外の季節のものとで、分けて使っていました。現代は、そこまできめ細やかな分け方をすることは減っています。夏用の丸ぐけ紐は見た目も涼やかなので、着物好きの人の中には持っている方もいるでしょう。
現在の主流の組み紐
一般的には帯留めといえば、組み紐を指すことが主流になっています。主に京都、三重の伊賀、東京の3カ所が名産地とされており、それぞれ京くみひも、伊賀組紐、江戸組紐と呼ばれています。
組み紐の帯締めは、従来は季節を問わず使われるものでした。しかし1990年頃から、レース組などの夏仕様の組み紐の帯締めが徐々に出回るようになると、夏用の組み紐の帯締めとそれ以外の組み紐の帯締めとを、分けて考える風潮が生まれていきます。フォーマルな場では、そうした心配りも求められますが、カジュアルに着こなすのであれば、色目などに注目するだけでも大丈夫です。
特に重宝するのが、冠組(ゆるぎ)と呼ばれる組み紐です。伸縮性があるだけでなく、冠(かんむり)の緒がルーツとなっていることもあり、四季を問わずに使用できるとされています。また、さまざまな着物に合うので、1本持っていると重宝します。
平らに組む平組(平打ち)
ポピュラーな組み紐の一つですが、組む手法によって高麗、貝の口、笹波、冠などに分かれ、それぞれ組み方が違います。特に高麗は格式が高く、結婚式などお祝いの席に着物を着るときには、ぜひとも合わせたい帯締めです。
色目や組み方によって、カジュアルなシーンにも、フォーマルな場面にも合わせられることが特徴です。安価なものも豊富なので、いくつか種類をそろえたいときにも便利です。
丸く組む丸組(丸打ち)
丸く組まれた帯締めで、太いものは振袖に使われ、少し細い目のものは訪問着や普段着に使用されます。フォーマルな場面のほうが、お目にかかる機会が多いかもしれません。
柔らかな印象を持つだけでなく、結びやすく形も整いやすいため、着物初心者にとっても扱いやすい帯締めです。また細いタイプのものには、もともと帯留めとして飾りがついているものもあります。
四角く組む角組(角打ち)
断面図を見ると角になっている組紐で、華やかな結び方ができます。どちらかというと、カジュアルなシーンによく使われ、ちょっと変わった雰囲気にしたいときに重宝します。平組、丸組に比べると出番は少ないですが、カジュアルな着方が多い人にはおすすめです。
浴衣用の可愛い飾り紐
浴衣というと、帯締めや帯留めの出番がないこともありますが、実は可愛らしい飾り紐を合わせることで、より着心地が良くなります。飾り紐を使うことで帯が緩みにくくなり、着崩れを予防してくれるのです。色もカラフルで夏らしいデザインが豊富なので、手持ちの浴衣と帯に合わせて選ぶことをおすすめします。
また、浴衣用の飾り紐の特徴として、帯を飾ってくれるというものがあります。帯締めには、帯を固定する役目があるため、特に帯留めを使った場合は、結んだところを帯の中へ隠すことが一般的です。しかし、浴衣の飾り紐は大ぶりの飾り玉が付いていたり、長さもあったりします。そのため、帯からその飾り部分を垂らして、浴衣に動きのある表情を与えてくれます。
浴衣を着る場面は、夏祭りなど出歩く機会が多いものです。飾り紐を活用して、浴衣をもっとおしゃれかつ可愛らしく着こなしてみましょう。
帯締めの結び方
帯を安定させるためにも、着物を着る際に使う紐の中で、一番強く結ぶことが必要になってきます。緩んでいかないように、左右の指で結び目をしっかりと押さえながら、ひとつひとつの手順を手早く行うことが結ぶコツです。
基本の結び方の本結び
本結びと聞くと難しく感じますが、しっかりと固く結べるため、安定感があります。初心者にとって帯が崩れにくくなるので、ぜひマスターしておきましょう。
2.右に持っている方を下に、左に持っている方を上にしてクロスさせます。
3.上になっている方(左側)を下から上へくぐらせて、一回結びます。このとき、たるまないように注意します。
4.今度は下になっているほうを右側へぱたりと倒し、上になっている右手側の先を下へ倒して、できた輪へくぐらせます。輪へくぐらせるときは、下から上へ通すことがポイントです。
5.結び目の形ができたら、ゆるみができないように人差し指でおさえて、一気に引き締めます。最後に、結び目が出っ張らないように、帯に沿う形で平らになるように整えれば完成です。
しっかりと結べる本結びは、緩まないように結ぶことがなによりも大切です。まずは、丸組のような結びやすい帯締めからはじめて、徐々に平らな平組にも慣れていきましょう。特にお太鼓を結ぶときには、この帯締めが帯全体を支えるため、とても重要です。
本結びの応用の藤結び
本結びがマスターできたら、お手軽に華やかさや可愛らしさを演出できる「藤結び」にも挑戦してみませんか。
2.そのまま本結びと同様に、下になっているほうを右側へ倒し、上になっている右手側の先を下へ倒してできた輪へ、下から上へとくぐらせます。こちらも、1.と同じようにもう一度くぐらせて、ぎゅっと締めたら完成です。
平組で結んでも可愛らしいですが、丸組や角打ちも愛らしく結べます。帯留めがなくても、帯へデザインをプラスできるので、ぜひ試してみてくださいね。
ぐっと華やかになる桜結び
お花見の席にもぴったりな、桜結びをマスターしてみましょう。まるで3つの花びらが帯に咲いたかのような、華やかな結び方です。
2.その状態で左手にある紐を使って輪を作り、右手側の紐と合わせて輪を崩さずに、ちょうちょ結びにします。すると、2つの輪ができます。
3.しっかりと結び目を締めたら、左の下のほうにある紐をぐるりと上へ回して輪を作り、帯締めの後ろへ通すようにして、3つ目の輪を作ります。ここで、輪の形を整えましょう。
4.どちらか片方の紐のほうが多めに残るので、房が上を向くように波打たせるようにして、帯締めに挟み込みます。全体のバランスを整えたら、完成です。
帯留めを使う場合
帯留めとは、裏側に紐を通せる金具がついていたり、それ自体が筒状になっていたりする、飾りの役目を持つものです。帯締めだけだと布の質感だけですが、帯留めを使うことで、金属や陶器のもつ印象を着物にプラスできます。帯留めをするときは、帯留めの金具が通る、平組の三分紐という細い紐を使います。帯締め自体が太いと通らないので、買うときには気をつけましょう。
1.帯留めを帯締めに通して、一度後ろへ持っていき、手前でしっかりと縛ります。このとき、帯が緩まないように、仮止めをしておいてもいいでしょう。
2.結び目を後ろへぐるりと回し、帯の中へしまいます。帯留めが帯の中央に来るように、金具と帯がこすれあわないよう注意して移動させて完成です。
帯締めの結びかたで表情が変わる
帯締めにもさまざまな種類があり、さまざまな結び方があります。さらに同じ着物を着るにしても、帯締めの結び方ひとつで、モダンになったり正統派になったりします。帯を変えたり、羽織を変えたりする以上の効果をもたらしてくれることもある、奥深い紐です。
カジュアルなシーンをより動きやすくしてくれる、帯締めをもっと活用してみましょう。自分の好みに合う帯締めをぜひ1本見つけて、もっと着物や浴衣を楽しみましょう。