「公認会計士を目指すには」社会人からでも遅くない一生モノの資格
社会人でも公認会計士になれるか
安定性や将来性の高い公認会計士。難関資格に合格し、国家資格を取得した人しか就くことができない職業です。将来のステップアップのために資格を取得したいが、その試験の難しさから、チャレンジしようか迷っている人も少なくないはずです。ここでは公認会計士の概要や資格取得に必要なことを紹介。公認会計士への一歩を踏み出すきっかけづくりになれば嬉しいです。
公認会計士は仕事をしながらでも目指せる
公認会計士になるのに、年齢や学歴などの特別な受験資格は必要ないので、誰でも目指すことができます。しかし、公認会計士になるための試験に合格するには、相当な勉強量が必要。仕事との両立をしなければならない社会人にとってはハードルの高い資格といえます。
ここ近年、社会人になり公認会計士を目指す人が年々増加しています。理由には、公認会計士の安定性と将来性の高さによるものと、2006年度の試験より開始された受験資格の撤廃や、科目合格制度の導入などから、以前に比べ、仕事と勉強との両立がしやすくなったことが挙げられます。
資格取得は簡単ではありませんが、以前に比べ社会人でも資格取得が目指しやすい環境になっていることから、社会人からの挑戦は十分可能です。
公認会計士の仕事と魅力
まずは、公認会計士について知識を増やすことが大切。公認会計士の仕事内容や魅力を通し、資格取得に挑戦するための気持ちを高めましょう。
公認会計士は会計のプロフェッショナル
公認会計士の主な仕事内容は、「監査」、「財務」、「経理」、「税務」など会計に関することがメイン。監査業務やコンサルティング、一般企業の財務部や経理部などで働くほか、独立して会計事務所を設立するなど、働き方はさまざまです。
その中でも会計士の最も代表的な仕事が、監査業務。株式を上場していたり、資本金が5億円以上の大企業の経営が健全であるかどうかをチェックする仕事です。会計士は監査業務により、企業の粉飾決算を防ぎ、社会的信用を支えるという大きな役割を果たしています。
コンサルティングは、企業の経営をサポートする仕事です。経営や会計に関してアドバイスし、経営戦略やコスト削減などを提案。企業の売上アップや会社の規模拡大に貢献します。また、一般企業の財務部や経理部では、企業の財務状況を管理し、予算の調整や編成をおこなう重要なポジションを担うことができます。
平均年収は1,000万円
一般サラリーマンに比べ、給料が高いことも魅力の一つです。働き方や就職先によって異なりますが、公認会計士の初任給は500万円から600万円。平均年収は1,000万円以上と高めで、出張手当や残業手当、福利厚生なども充実しており、安定性が高く、モチベーションが保ちやすく、働きやすい環境にあるといえます。
公認会計士になることは容易ではありませんが、その専門性の高さから、ある程度安定した生活を送ることができます。また、自分次第で、年収アップも可能。まさにステップアップには相応しい職業といえます。
社会的ニーズが高く将来性も高い
経理・財務・会計は、企業の規模に関わらず、企業が発展していくうえで、必ず必要となるスキルです。そのため会計に関して専門性の高い知識や技術をもっている公認会計士は、社会的ニーズが高く、幅広い活躍が期待されます。
とくに近年、上場企業に対する内部統制監査の義務化や、企業のグローバル化に伴い国際財務報告基準の導入など、公認会計士の業務がさらに広がりをみせています。国際財務報告基準とは、世界的に多くの国が採用している会計処理のルールのこと。今後公認会計士は、国内だけでなく海外も視野に入れた、さまざまな分野でのさらなる活動が重要になってきます。
社会的ステータスが高い
公認会計士は、医師や弁護士と並ぶ三大国家資格の一つ。まさに、社会的ステータスが高い職業であり、一生モノの資格といえます。医師にしかできない医療行為や、弁護士資格のあるものしかできない裁判と同様、公認会計士による監査業務は、公認会計士にしかできない独占業務です。
医師や弁護士、公認会計士は、人から「先生」と呼ばれる仕事です。なるためには、かなりの時間と努力が必要ですが、その分、将来性や自分自身の大きな成長につながります。まさに今後の人生がガラッと変わってしまうくらいの、社会的ステータスが高い職業といえます。
税理士や行政書士としても働ける
公認会計士になると、税理士や行政書士の仕事もできるようになります。通常、税理士や行政書士になるには試験が必要ですが、公認会計士の資格取得後、税理士会への登録をすれば、無受験で税理士の資格が取得できます。
税理士や行政書士の仕事は、主に税務に関することがメイン。企業に税に関するアドバイスをしたり、税に関する書類作成や申告をおこなうことができます。税理士は大企業だけでなく、中小企業や個人も顧客。とくに会計事務所を開業している公認会計士は、税理士業務もおこなっているところが多く、その仕事内容は多岐にわたります。
公認会計士試験の概要
公認会計士になるための第一関門である試験。極めて難易度の高い内容で、知識の暗記や高度な計算能力が必要です。
試験は短答式と論文式の2段階
試験は、短答式と論文式の2種類で、短答式に合格すれば論文式を受けることができます。短答式は年二回、論文式は年一回実施されており、それぞれ会計に関するさまざまな問題が出題されます。
短答式は、マークシート形式の試験。専門知識を要する基本的な問題が幅広く出題されます。合格ラインを突破すれば、論文式にチャレンジすることが可能です。論文式は、記述形式。選択科目によっては計算問題が多く出題されます。思考力・判断力・応用力など、公認会計士になるために必要な知識が備わっているかを判断します。
試験の必須科目
短答式試験の必須科目は、財務会計学・監査論・企業法・租税法の四科目。一科目ではなく、四科目すべてが合格点に達している必要があります。そのため非常に広範囲の知識を、一度に勉強しなければなりません。
財務会計学は、簿記の知識に加え、財務諸表論など会計に関する内容のこと。監査論とは、財務諸表監査に必要なルールや内容、背景など。企業法は、会社法や商法、金融商品取引法など幅広い範囲での知識習得が必要。租税法は、法人税や所得税、消費税の計算方法や構造に関しての内容です。
上記のすべての科目は、必ず受けないといけない試験内容です。会計に関しての法律など専門知識の把握に加え、論理的に問題を読み解いていく力が必要になります。
論文式試験は選択科目制
論文式試験は、経営学・経済学・民法・統計学の中から一科目を選択して受験します。ある程度得意な分野や、勉強しやすい分野を選択することが合格への近道です。
経営学は、経営戦略論やリーダーシップ論など企業経営のあり方を研究する学問。時事的な問題が取り上げられることも多いので、最新の経済状況を常に把握しておく必要があります。経済学は、ミクロ経済学とマクロ経済学に関しての基礎的な内容や計算方法の把握が必要。
民法は、売買契約など民法についての内容。統計学は、記述統計や確率などのデーターを分析する力が必要。計算が多い科目なので、暗記が得意ではない方にはおすすめです。
科目の免除と免除対象者
試験の免除対象者の条件を満たしていれば、その科目においては試験を受ける必要がありません。まず、短答式試験の合格者は、申請することで以後二年間、必須科目が免除されます。二年以内に論文式を合格すれば、試験は突破できます。また税理士資格取得者は財務会計学が免除、司法試験合格者は短答式試験と、論文式試験での企業法と民法が免除されます。
そのほか、大企業や国、地域公共団体で、監査に関する業務に七年間以上携わっていた人は財務会計学の免除、不動産鑑定士試験合格者は、論文式試験での経済学または民法の免除など、持っている資格や経験によっては、試験の一部の免除を受けることができる場合があります。
公認会計士試験の難易度
資格取得には、勉強期間を含めると約五年かかるといわれている公認会計士の試験。その難易度を実際の数字でみてみましょう。
近年の合格率は約10%
公認会計士・監査審査会が発表しているデータによると、平成28年度10.8%、平成27年度10.3%、平成26年度10.1%と、近年の合格率は約10%程度。これは、受験者全員からとった平均なので、勉強時間が少ない社会人で限定すると、もう少し合格率は下がると推測できます。公認会計士の試験合格がどれだけ厳しいかが、数字からも実感できます。
公認会計士は、試験が受かったからといって、なれるわけではありません。第二段階として、試験合格後、実際現場にでて、二年以上実務経験を積む必要があります。その後、日本公認会計士協会がおこなう終了考査(筆記試験)を受け合格したら、晴れて公認会計士になれます。
勉強時間の目安は3,000時間
公認会計士の試験を突破するには、かなりの勉強時間が必要になります。また、必須科目が多く出題範囲が幅広く、得意分野に絞ることができないので、計画的に勉強をすすめていく必要があります。
勉強時間の目安は、約3,000時間。仕事との両立が必要な社会人は、平日は3時間から4時間の勉強時間を作るのが限界です。土日をフル活用し8時間勉強したとしても、約一年半から二年の勉強期間が必要になります。仕事からの帰宅後の勉強が難しければ、朝活として勉強をおこなうなど、生活スタイルにあわせた学習プランを立てることが大切です。
社会人が公認会計士資格をとるには
時間に制約がある社会人。公認会計士資格の取得には、長期的で計画的な学習プランを立てることが必要です。
一発合格ではなく科目合格を狙う
無理に勉強し一発合格を狙うのではなく、まずは必須科目である短答式試験の合格を目指して勉強したほうが現実的です。短答式試験合格後二年間は、試験が免除されます。その期間を利用し、論文式試験の勉強に取り組みます。論文式は選択科目なので短答式試験に比べると、勉強内容ははるかに楽になります。
まずは、短答式試験に合格することが大切です。仕事との両立をしながら資格取得を目指すなら、できるだけ長期スパンで学習計画を考えることが合格への近道です。
資格予備校の講座を受講する
時間が限られている社会人にとって、学習方法を考えることはとても重要です。夜間講座があるスクールに通ったり、通信講座を利用したり、TACなどの資格を取得するための予備校に通ったりと、学習方法はさまざまです。それぞれメリットとデメリットがあるので、どの学習方法が自分にあっているかをしっかり考え検討することが大切です。
それぞれの学習方法のメリットとデメリット
夜間講座のあるスクールは、主に仕事帰りに通い勉強します。専門の先生から授業を受けることができ、独学よりも短期間での知識習得が期待できます。しかし、授業の時間が決まっているため、残業が多い仕事との両立は難しく、続けて通うのが困難になります。
通信は、勉強時間に制限はないため、自分の好きな時間に好きな量だけ勉強できるのが魅力です。また、スクールに通うよりも費用も抑えられ、経済的負担も少なく済みます。しかし強制力が少ないため、自分に甘い人は、明日やろうと勉強が先延ばしになり進みません。
資格取得に特化した予備校は、専門の先生による試験対策が徹底されているため、合格に近い学習方法といえ、比較的短期間での合格も目指せます。ただし、数万円から数十万円と費用がかかるので、なかなか合格できない場合は、かなりの出費が続くことになります。
諦めずにとにかく勉強
公認会計士資格取得を決めたのなら、とにかく勉強に必死になることが大切です。一年や二年勉強に捧げることで、一生モノの資格が取得できます。取得後は、年収のアップや職場環境や待遇の変化、仕事内容がより専門的になるなど、あらゆるステップアップが期待できます。
勉強を始める前にまずは目標を考え、必要な勉強量を把握し、学習戦略を立てることが重要です。人生で考えたらほんの一瞬です。公認会計士を目指すなら、友達と遊ぶ時間や寝る時間、趣味の時間を削ってでも勉強にあて、合格までやりきる覚悟をもち取り組むことが大切です。
今からでも公認会計士を目指そう
社会人でも公認会計士を目指している人は多くいます。それなりの努力と時間が必要ですが、しっかり勉強すれば合格も夢ではありません。公認会計士の世界は、女性にとっても働きやすい職場です。結婚や出産などのブランク後の仕事に困ることもなく、男女関係なくステップアップが可能。将来のための挑戦、今からでもけっして遅くはありません。
公認会計士の年収は高い?仕事内容と給料からその実態を探ろう