「TOEICスコアに有効期限がある」ことに備えてできることは何か
社会的な有効期限をおさえておこう
就職などの評価で「TOEIC何点以上」といった表記がありますが、それはいったい英語力の何を表しているのでしょうか。TOEICには目的に応じていくつかの種類があり、それぞれ測定する能力が異なります。そのため単純に「TOEICスコア何点」がその人の英語力の全てを表すわけではありません。
また一般的にもその評価はかなり違いがあります。特に企業は、求める能力によってスコアはもちろん、それがいつ受験した時のものかが問われる場合も少なくありません。それはその人の「本当の英語力」を知るため、実際に仕事で役立つレベルなのかを見極めるためです。
公式な見解とは別に今一般社会がTOEICをどのように評価し、とらえているかをみればその概要やどのような備えが必要かがみえてきます。
TOEICのスコアの見方
一口に「TOEIC」といっても、実はさまざまなテストで構成されています。それぞれのテストによってスコアレベルが違い、その意味することも異なります。改めてTOEICとはどんなテストなのか、そのスコアは何を表しているのかを知り、どれが役立つのかをしっかり見極めましょう。
TOEICには5種類のテストがある
TOEICは目的や測定したいスキルに応じて5種類のテストがあります。初級・中級者のリスニング・リーディング力を測る「TOEIC Bridge」、より上級者向けのテストでは「TOEIC L&R」、「スピーキング」「ライティング」「スピーキング&ライティング」で、それぞれに英語に必要な聞く力・読む力・話す力・書く力を測定します。
Bridgeを除いて英語力を評価する4技能が別々にスコアとして測定されるのが特徴で、それぞれ出題形式も異なり、より正確なレベルを測定できるよう工夫されています。
TOEICL&Rが一般的なTOEICテスト
TOEIC受験者数は年々増加しており、2015年は270万人が受験しました。その中でリスニング・リーディング力を測る「TOEIC L&R」の受験者は255万人で、「S&W(S・Wそれぞれ単体受験を含む)」や「Bridge」の受験者数を大幅に上回っており、一般にTOEICテストといえば、ほとんどが「TOEIC L&Rテスト」のことをいいます。
それは「話す」ためにまず「聞くことができる」、「書く」ためにまず「読める」というように、英語力を高めるための「入り口」であるためだといえます。例えば「読む」だけではなかなか上達できなくても同時に聞き・話し・書いて勉強すると、より定着しやすくなります。
一般的で最も多く求められる英語力であり、また勉強の効果が出やすくスコアアップが狙いやすいのもその理由なのかもしれません。
総得点では実質の英語力を図りえないTOEIC L&R
TOEICテストはもともと「力を測る」テストであるため「合格・不合格」というわけ方はせず、受験時の能力を「スコア」として評価してくれます。リスニングとリーディングを分けて測定するなど「能力別に測る」ものなので、総得点が難点だから英語力はこれくらいといったような証明にはなりません。
例えば、リーディングについては高得点でも、リスニングではそうでもないといったこともあり得ます。またL&Rテストで測定されないスピーキングやライティング能力が高ければ日常生活に遜色ないコミュニケーションをとることもできますが、その人がL&Rテストで高スコアを出せるとも限らず、その英語力の全てを測るものではありません。それより大切なのは、その測定結果からそれぞれの課題を乗り越え、より高い英語力を獲得することではないでしょうか。
TOEICスコアの有効期限
合格・不合格で表現されず、もしその後全く勉強しないで英語に関わらなくなり英語力が下がってしまったとしても、そのスコアはいつまでもあなたの英語力を証明するものなのでしょうか。企業の採用担当者はその人の「本当の英語力」を知りたいはずです。いったいTOEICスコアは一般にどのようにとらえられ、実際の有効期限はどれくらいとされているのでしょうか。
協会はTOEICスコアの有効期限はないと提示している
日本でTOEICテストを実施・運営する国際ビジネスコミュニケーション協会は、「TOEICスコアの有効期限はない」と提示していますが、公式認定証の再発行期限は「試験日から2年以内」とされています。
テストの「受験時点での英語力を測定」するという意図からすればその時点での能力は確かでしょうが、もしその後縁遠くなり英語を話すことも見聞きすることもなくなっていたとしたら、そのための勉強をしていなかったとしたら、あなたはいつまでその力を発揮できると思いますか。
2年の有効期限を設定している企業もある
TOEICスコアが役立つ場面の一つに、企業による採用査定があります。その際の履歴書資格欄へはスコアを記載するとしても、例えば10年前のスコアを持ち出されても今がどうなのか採用担当者はわかりません。
能力を正確に表すものとしてTOEICがあるとすれば、ある人の10年前のスコアと、別の人の今年のスコアを単純に比較できるでしょうか。当初「TOEICの有効期限は2年」としたのは採用担当者の勘違いかもしれませんが、応募の公平性を考えると、一定の期限を設けるのは仕方ないのかもしれません。
TOEICで有効期限を設定するかどうかは企業次第
TOEICスコアをどのように評価するかが企業によって違うように、有効期限についての考え方も企業次第です。もともと仕事内容によって求められる英語力が違いますし、その選定基準も大きく異なります。中には募集要項にTOEICスコアについての記載のない企業もあります。
TOEICスコアが何点以上ならこのクラス・ジャンルの企業に有利といったような一律の考え方はなく、英語力を生かした仕事ができる企業に就職したいならその企業を絞り、その企業の選定にかなうための基準に見合う能力で臨むのが賢明です。
確実に証明したい場合は再受験
とはいえ、やはり企業が知りたいのは「本当の英語力」のはずです。過去のスコアより最近のスコアを基準として選定するでしょう。そのためには常に勉強を怠らず能力の維持に力を注ぎ、いつでもその力を発揮できる状態でいたいものです。
そのために確かな証明として、再受験することをおすすめします。TOEICサイトに登録し、インターネット上でTOEIC L&R公開テストの受験申し込みをすると、1年後の同月の公開テストに割引価格で申し込むことができます。またこのサービスを利用して受験すれば、さらにその1年後の同月の公開テストも同様の割引サービスが適用され大変お得です。
そうすれば、定期的に自分の力を確認できると同時に、企業だけでなくさまざまな方面への客観的証明として利用できます。
TOEICと合わせて確認したい試験の有効期限
TOEICの他にも英語力を証明するものはいくつかありますが、それぞれ有効期限はどのようになっているのでしょうか。主に留学する際に必要な手続きや企業の採用と、それに伴う有効期限についてみてみましょう。
実用英語検定試験の有効期限
TOEICと並んで英語能力を測る実用英語検定試験「英検」は、有効期限がありません。ただ、それを証明する「合格証明書」は、合否通知・合格証書と一緒に最初は無料で発行されますが、その後は有料になります。またWEBからの再発行は、過去2年間に受験したものに限られます。
また、他の資格と同様、取得時から長い年月が経つと資格として評価されにくくなります。企業などの評価はおよそ2年以内に取得した資格を有効とする場合が多いようです。
実用英語検定試験スコアの有資格者確認
英検は、世界各国の教育機関で海外留学時の語学力証明資格に認定されています。おおよそ2年制大学なら2級、4年制大学なら準1級、大学院なら1級の資格が必要とされ、それを留学先に証明する必要があります。
その英語力を証明する「英検スコアレポート」は、英検留学情報センターを通じて行われます。有料で、郵送やWEBでの申し込みができます。
TOEFLの有効期限
TOEFLは、TOEICと同じように英語を母国語としない人向けの英語コミュニケーション能力を測るテストで、TOEICと違い実生活でのコミュニケーションに必要な読む・聞く・話す・書くの4技能を総合的に測定します。
TOEFLの有効期限は2年間と定められています。しかし、留学の際は大学によって独自に有効期限を設けている場合があり、例えば1年以内に取得したスコアが必要だったり、中には半年以内のものを求められる場合もありますから、留学先の案内をよく理解しておく必要があります。
自分の資格にどこまでアピール力があるのか知ろう
これから日本は、日本語以外でのコミュニケーションを取れる人が求められます。ITやテクノロジーの進化に伴い、今もどんどん国境が意味をなさなくなるようなビジネスの世界で、自分の思うように振る舞うために必要な力だからです。
しかし、TOEICスコアで何点以上なら履歴書に書いて有利になるといった明確な基準はありません。それは企業の業種や仕事の内容によって求められる現在の能力が違いますから、それは企業のことをよく調べ、対策を練るしかありません。
そのための第一歩、TOEICもせっかく努力して高いスコアを取るのですから、少しでも有利に使えるようその評価レベルやどこまで自分をアピールするものとして意味があるのかをしっかり把握しておきましょう。そうすれば勉強するためのモチベーションになり、きっと将来の「思うような自分」に近づけると実感するでしょう。