食事のスペシャリスト。栄養士になるためにするべきことは?
栄養士になるには
栄養士は、食生活を影で支える重要な役割を担っています。日本はいつでもすぐに食べ物を手にすることができる恵まれた環境にあります。恵まれているからこそどのような食事を摂るかは重要です。好きなものや、食べたいものだけで済ませていると病気になる可能性もあります。
食事は体にとって必要なものを補給するためのものです。そこで栄養士の知識が重要なものとなってきます。体に必要なものを上手に摂るために、栄養バランスの整った献立を考えられる栄養士の仕事は、社会的にも重要な仕事です。
栄養士になる方法
栄養士になるためには何をしたらよいのでしょうか。栄養士には資格がありますが、試験を受けて合格する必要はありません。指定されている施設を卒業すれば、栄養士として認定されます。施設にもいろいろな種類があるので目的に合わせて選択し栄養士を目指しましょう。
栄養士養成施設に入学する
栄養士になるためには、栄養士の養成学校を卒業する必要があります。養成学校は、厚生労働大臣が指定認可した学校で、大学・短大・専門学校などいろいろな養成学校があります。
実際に栄養士として活躍している人の出身としては短大が多いですが、通いやすいところを選択するとよいでしょう。4年制もあれば2年制もあります。卒業した学校によって栄養士の資格に違いが出るわけではありません。
ただし、管理栄養士になることまで考えている場合には、4年制大学のほうが良いでしょう。将来どのような仕事に就きたいのかを考えて選択しましょう。
特別な試験はなく卒業後に申請するだけ
栄養士の養成学校を卒業すると、自動的に栄養士の資格を取得することができます。養成学校で栄養士養成課程を修了し、卒業すると都道府県知事より免許証が発行されます。これで、栄養士の資格を取得したことになります。栄養士は養成学校を卒業しないと取得することができない独占資格です。
栄養士になりたいのであれば、指定の養成学校を卒業しなければなりません。仮に、違った進路を選んでいても、栄養士になるためには養成学校に入学しなおす必要があります。
夜間や通信教育の施設はなし
栄養士の養成学校は、夜間の授業を行っているところも、通信教育を行っているところもありません。栄養士になるために必要な知識の量はかなり多く、その範囲も広いため、通信教育や夜間の授業では賄うことができません。技能を学ぶための実習もあるので、通勤教育ではできないのです。
独学で勉強することはできない
栄養士の養成学校としての認可を受けている学校を卒業することで、免許証を受取ることができます。資格取得のための試験に合格すればよいというものではないため、独学で勉強することはできません。独学で知識を得たとしても、養成学校を卒業しなければ免許証をもらうことができないのです。栄養士になりたいなら、必ず養成学校に通う必要があります。
栄養士になるまでの費用は約300万円
栄養士の養成学校には私立と公立があり、さらに4年制、3年制、2年制とあります。どういった学校に通うのかによって必要な費用は変わります。
私立よりも公立の方が費用を抑えることができ、さらに2年制なら、3年制や4年制より抑えることができます。最も費用を抑えた場合で考えても約300万円程度が必要。奨学金を使用することもできますから、まずは将来を考えてどういった養成学校に通ったらよいのかを検討しましょう。
管理栄養士の栄養士との違い
栄養士と管理栄養士の違いはなんでしょうか。簡単に説明すると栄養士の上級資格が管理栄養士です。資格の取得方法も違います。きちんと理解して将来必要となのがどちらなのかを判断しましょう。
知識や高度な技術を持っている
管理栄養士も栄養士も同じように食事に係わる資格ですが、管理栄養士のほうが高度な知識や技術が必要となります。そのため管理栄養士になるためには国家試験に合格する必要があります。
栄養士は健康な人の食事指導や給食の管理を行います。管理栄養士はこれらの他にも、傷病者の症状に合わせた食事の管理、指導を行います。つまり、それだけ高度な知識と技術が必要な仕事なのです。
国家試験を受ける必要がある
管理栄養士は、国家資格となるため国家試験に合格する必要があります。栄養士に比べ、より詳しい知識や技術が必要。それを習得した人でないと管理栄養士になることはできません。栄養士に比べるとかなり難易度は高くなり、それなりの準備も覚悟も必要ですが、栄養士ではできない仕事も行うことができるのが管理栄養士です。
試験を受けるために実務経験が必要
管理栄養士は、試験を受けるために、養成学校を卒業し、実務経験を積まなければなりません。高校卒業後すぐに、管理栄養士養成施設に入学して卒業することができれば、そのまま国家試験を受けることができます。
栄養士の養成学校を卒業した場合は、栄養士としての実務経験を経てからでないと、管理栄養士の国家試験を受けられません。何年制の学校を卒業したのかによって必要な実務経験年数は違います。
・2年制の栄養士養成学校 実務経験3年以上
・3年制の栄養士養成学校 実務経験2年以上
・4年制の栄養士養成学校 実務経験1年以上
栄養士の養成学校を卒業した場合には、養成学校の在学期間と合わせて5年が国家試験を受けるために必要です。管理栄養士になりたいのであれば、最初から管理栄養士の養成学校に入学するのが最短です。
病気の人に専門的な指導ができる
管理栄養士は、健康な人の食事や給食管理だけでなく、傷病者の食事の指導や管理も行います。傷病者には、症状に合わせた管理が必要。患者それぞれの体質を考える必要もありますから、病気に対する専門的な知識も必要となってきます。
医療現場で、医療の専門家とともに、患者の治療を食事面から考えるのが、管理栄養士の仕事です。
特定の施設に必ず配置される
管理栄養士は就職面で有利に働きます。医療保険機関や、更生施設など特定の施設、また一定規模以上の施設では、必ず管理栄養士を置くことが決められています。つまり、管理栄養士を求めている施設は多いということ。特定の施設だけでなく、企業などでも社員の健康管理のために管理栄養士の需要が高まってきています。
さらに言えば、栄養士を必要としているところであれば管理栄養士も働くことができます。職場は多くあり、健康志向の高まっている現代では欠かすことのできない存在ともいえます。
栄養士の就職先
栄養士の就職先として考えられるところは数多くあります。学校などの給食センターはもちろん、お弁当の製造もとでも必要です。さらに、食事の指導の面で、地域や食品メーカーなどでも必要とされます。
どういったところに就職するのかは、どのようにして食に係わっていきたいのかによっても違います。栄養士の代表的な就職先をいくつか紹介します。
食品メーカーの研究職
食品メーカーの研究職、新商品の開発などです。ここでも栄養士の存在は欠かすことができません。健康志向の高まっている現代、味でなく栄養バランスの良さも必要です。食材ひとつひとつの栄養素などはもちろんのこと、バランスの良い組み合わせなど専門的な知識が生かされます。
健康志向の高くなっている今、食品メーカーでも商品開発のためにより専門的な知識を持ち、商品に生かすことができる人材は重要な存在となっています。
学校給食の献立作成
栄養士の職場としてイメージする人も多いのが幼稚園や小学校です。幼稚園や小学校など給食を提供しているところでは、栄養士の存在は重要なものとなります。毎月の献立を作り、それに従って給食が提供されます。
成長していく子供たちの体に必要な栄養が充分に摂れる献立を考えなければなりません。近年では献立を作るだけでなく、食育として、子供たちに食事の大切さや栄養についての説明などをすることも多いです。子どもに接しながら、栄養の知識と技術を生かせる職場です。
レストランのメニュー開発
レストランといった飲食業でも栄養士の需要は高くなっています。ダイエットや糖質制限、塩分控えめなどに特化したメニューを提供するレストランも多くなっています。こういったメニュー開発は栄養士のように専門的な知識を持った人が必要となってきます。
レストランだけでなく弁当宅配などを行っているようなところでもメニュー開発において栄養を考えることは重要です。栄養と味の両方を満足させることが重要ですから、きちんとした知識の元に開発に携わることができる人材として栄養士の役割りは重要でしょう。
スポーツ関係の栄養指導
スポーツ関係の栄養指導も栄養士の重要な役割。効率的に体を作るための食事内容、栄養素はもちろんのこと、エネルギーや食事を摂るタイミングなどの指導も栄養士の仕事です。
アスリートの食事に栄養士は不可欠。スポーツ選手にとって食事は体を作るためのものであり、厳しいトレーニングの合間の楽しみでもあります。その両方を実現する重要な役割を担うのが栄養士です。
フリーのフードコーディネーター
栄養士の資格を持っている人の中には、フリーのフードコーディネーターとして活躍している人もいます。フードコーディネーターとは食に関するあらゆることに係わってくる仕事です。レストランの開店やメニュー開発に携わることもあれば、食に関する情報発信など多岐にわたります。
実際にどのようなことを行うのかは、それぞれの得意分野を生かすことになりますが、多彩に活躍することができる可能性があると考えることができるでしょう。
栄養士の資格の魅力
栄養士は、これからも需要が高まることが考えられる資格です。生きていく上で必要不可欠な食事を通じて健康管理を行い、食の大切さを教えることができるのも栄養士です。
特に健康志向が高くなってきている現在では、欠かすことのできない存在。あらゆる方面での活躍が見込まれる仕事といえます。
人の健康に貢献できる
栄養士の仕事の魅力といえばまずは健康に貢献することができる点でしょう。食事の指導や管理を行うことで、健康な体づくりのお手伝いをします。さらに管理栄養士ともなれば病気の回復のために食事でサポートを行います。
高齢者の健康はもちろんのこと、子供たちの食事指導をおこなうことで健康的な成長のサポートを行うことができます。食事は毎日のこと。体を作る重要な要素です。食事に係わることで人の健康に貢献できることは大きな魅力です。
求人の種類が多彩にある
栄養士の仕事というと給食の献立作りなどをイメージする人も多いのですが、実際には、様々な種類の求人があります。食品メーカーなどでも商品開発に栄養士の知識は欠かすことができなものとなっています。病院なや企業の社員食堂、官公庁、スポーツクラブなどその種類は多彩です。
また、正社員としてだけでなく、パートやアルバイトでも働くことができる職場も多くなっています。栄養士として、どのように食と関わっていきたいのかを考えて、どういった求人を選択したらよいのか考えるとよいでしょう。
転職や復職がしやすい
栄養士の求人は多種多様なため、出産や育児のための休職や、転職もしやすいといえます。ただし、転職を考える場合には、どのような方面に進みたいか考え、それに必要な知識をつけることも必要です。転職に有利に働く専門的な知識と、栄養の知識と技術があれば、就職先には困らないともいえます。
全国どこでも働ける
栄養士の仕事は全国どこでも働く場所があると言えます。仕事場に制限がなく、栄養士を求めている職場の種類は多いため、全国どこへ行っても何らかの求人を見つけることができるでしょう。
結婚して引っ越すことになった場合でも、栄養士の求人を見つけることは難しくありません。働く場所を選ばない、引く手数多なのも栄養士の魅力です。
家族の健康もサポートできる
栄養士の資格取得を目指す人の中には、家族の健康管理を目的としている人も少なくありません。栄養士の知識は、人のために健康のサポートを行うだけでなく、家族や自分の健康のサポートにも役立ちます。健康だけでなく家族の病気をきっかけに治療の一環として食事でサポートを行うために栄養士の資格を採る場合もあります。
家族の健康は何よりの宝。ただ食事を作るのでなく、健康を考えたバランスの良い献立にすることで、毎日元気に過ごせるでしょう。
栄養士を目指す上での留意点
栄養士は食事から健康を考えるうえで必要不可欠な存在です。魅力的な資格であるのと同時に注意しておきたいこともあります。理想だけを見てしまっていると、こんなはずではなかったと落胆してしまう可能性もあります。
平均収入は低め
資格があればある程度いい収入を得ることができる、と思いがちですが、栄養士の平均収入は決して高くありません。栄養士の平均年収は250~400万円程度。栄養士というだけで、しっかり稼ぐというのは難しいでしょう。栄養士は重要な役割を担ってはいますが、現実の給料待遇はそんなによくないということを頭に入れておきましょう。
場合によっては、パートや臨時社員の形態での仕事しかないような場合も。決して楽に稼ぐことができる職業ではないことはたしかでしょう。
職業としての認知度は低い
栄養士の認知度はあまり高くありません。資格として知ってはいるけど、仕事内容まではわからないという声も多いのが現実です。学校給食・お弁当・レストランなど活躍の場は多いですが、表立っての仕事というより、商品や食事などの裏に隠れてしまうことが多いので、認知されにくいといえます。
栄養士がどう必要なのか理解されていない場合もあることは頭に入れておく必要があります。飲食に係わる仕事であれば、どこでも栄養士が必要なのかというと、そうでない場合も多いこともあります。
人間関係のトラブルが起きやすい
栄養士には女性が多くいます。そうすると、職場での女性の比率が高くなるので、どうしても女性ならではのトラブルや、人間関係のトラブルが起こりやすいともいえます。人間関係のトラブルは修復することが難しいです。
さらに、栄養士の資格を持つ人材が何人もいるような場合、必要に応じて仕事の内容に差がでることも多くあります。献立作りを行う人もいえば、時には調理を専門に行う必要が出てくる場合もあります。同じ資格を持ちながらも仕事内容に差が出ることもあり、トラブルの原因となることがあります。
仕事はもちろんですが、人間関係も十分に気を付ける必要があります。栄養士の職場に限ったことではありませんが、特に女性が集まりやすい職場で起こりやすいです。
献立作りができない可能性もある
栄養士の資格をとって就職しても、だれもが献立作りができるとは限りません。栄養士の資格を持っている人は多く、そのすべての人が理想の仕事を行っているわけではありません。調理や配膳といった仕事がメインになっていることも少なくないのが現実です。
同じ職場に管理栄養士がいれば、その人の指示に従って仕事を行うことになり、なかなか献立作りができないということも。栄養士だからこその知識や技術が生かせないということも多々あることです。
栄養士として活躍したいのであれば、栄養士で満足するのではなく管理栄養士の資格取得を考えたり、調理師資格を取得したりと考えていくことも大切でしょう。
栄養士としての未来のビジョンを明確にしよう
栄養士を目指す人は少なくないでしょう。栄養士になるためには必要な知識をしっかり身に着けなければなりません。また、栄養士の資格をとって将来どのようなことに生かしたいのかが重要です。栄養士としてどのような仕事をしたいのかを明確にすることで、必要なことが見えてきます。
栄養士は就職しやすい資格ではありますが、実際に就職しても理想の仕事ができるのかは別の問題です。給食センターなどで献立作りをしたいのか、健康のために栄養指導を行う仕事をしたいのか、など、具体的に将来を描いて見ましょう。そうすれば、就職先や栄養士以外に必要な知識がわかります。