失業保険は最長3年間延長可能。制度の有効利用に必要な情報と知識
延長制度を使った失業保険を受給する知識を得よう
自己都合、会社都合で離職した場合で条件を満たしている場合、失業保険を受給できます。ただ失業保険を受給するにもすぐにでも働ける状況である、求職活動中であるなどのさまざまな条件や、申請できる期限の取り決めがあります。しかし病気などの理由でそれを満たすことができない場合、延長制度というものがあり最大4年間まで申請期限を延ばすことができます。
失業保険受給期間と受給開始日について
就職してから、人生の転機が訪れることが誰でも起こります。例えば、結婚、出産や予期せぬ病気になってしまい入院することになったり、転職するなどです。就職したときに特定の条件を除きほぼ必ず雇用される私たちは、雇用保険に加入することが法によって決まっています。そして必ず雇用保険料を給料に応じて(64歳から保険料の免除対象者となる)一定の率で納めています。
そして、たとえ就職先が変わったとしても離職以前2年間の間に、通算して1年以上雇用保険に加入することを条件に、失業したときに就職したい意思を持っていれば失業保険の給付(以下、失業給付)が受けられるようになっています。
この失業給付は、退職月以前6カ月の給料額、退職時の年齢、離職理由、雇用保険加入期間などにより失業給付の受給額が大きく変わり、失業給付の受給開始日は退職理由により変わります。このような複雑な仕組みで支給額の変わる失業保険について、知っているのと知らないのでは全く違うので、しっかり調べておくことが重要です。
受給期間は年齢と雇用保険の勤務年数で決まる
受給期間とは、失業給付を受け取れる期間の事で、これは通常、離職してから1年間と定められています。また、失業給付の受給額は、雇用保険に何年加入していたか、また離職したときの年齢、離職したとき以前の給与で違います。これらの情報から受給額や期間は調べることができますが、ハローワークで確認するのが確実です。
受給開始日は退職理由による待機期間で変わる
失業給付は、退職の後すぐに次の就職が決まっていないときは、すぐ支給してほしいと思いますが、受給するまでには待機期間もあります。早く受給するにも基本的に、退職した日から継続して4日間失業状態にある必要があり、退職日後の3日間は、支給されることがないので、注意が必要です。
受給開始日は自己都合による退職と、会社側の都合による退職があり、この二つでは待機期間が違うことを知ることが重要です。自己都合による退職は通常、待機期間が3カ月あります。一方で会社側の都合による退職では、待機期間がなく、退職日の3日間は失業給付がないため、4日後から支給されます。
また、自己都合による退職の場合、いくつかの条件を満たしていれば通常の待機期間が3カ月のところ、待機期間なしで支給されることもあります。いずれにしても、早く失業給付を受給したい方は、会社がハローワークで離職の手続きをした後、手元に届いた離職票を持って速やかに手続きをすることが重要です。
失業保険の個別延長給付制度について
失業給付を受給している期間は、給付条件の就職活動を続けますが、残念ながら失業給付を受給し終わってもまだ新しい仕事に就けないことも想定できます。そういった場合は条件付きのさらなる給付を行い、その期間で新しい仕事に就けるように支援する個別延長給付制度と地域延長給付制度があります。
平成29年3月までは、旧個別延長給付制度が実施されており、会社側の都合(解雇、倒産)により失業した場合と有期雇用契約が終了して失業した場合には、就職活動をしながら受給日数に達してしまい、まだ就職先が決まらない場合、いくつかの条件を満たしていれば個別延長給付。または地域延長給付の援助制度があり、平成29年(2018年)4月以降から、恒久制度として、「個別延長給付」の制度が始まっています。
この制度は、対象者をごく限定したものとして新しい条件を満たす場合の対象者に絞っています。従来の個別延長給付は、名称を変更して「地域延長給付」となりました。この地域延長給付は、平成34年(2022年)3月までの時限措置制度ですので、注意が必要です。
個別延長給付は受給金が増える
恒久制度として始まった個別延長給付制度は、受給金は増えますが、従来の条件よりさらに限定された条件を満たす必要があります。もちろん自己都合で退職した場合は対象とはなりませんが、さまざまな条件を満たしていれば、受給日数が最大60日間、または最大120日間延長をして受給できる場合があります。
また、従来の個別延長給付に近い制度として地域延長給付(2022年3月まで)は、受給条件がより緩やかなものになっています。こちらは条件を満たしていれば、受給日数が60日間延長をして受給できます。ただし、個別延長給付、地域延長給付のどちらも所定給付日数が270日もしくは330日ある方は、最大延長給付日数が30日間少なくなりますので、注意が必要です。
個別延長給付対象者の条件及び地域延長給付対象者の条件
この個別延長給付対象者は、ごく限られた条件の方に支給することが決められています。解雇や倒産で離職した人(特定受給資格者)や、有期契約の雇止めで失業した人(一定の特定理由離職者)で、再就職のために職業指導を行うことが適切と認められた人が対象者となるのは今までと変わりません。それに対して、地域延長給付は、個別延長給付より条件が少なくなっています。
個別延長給付 地域延長給付の対象になる条件
延長給付制度の対象者となるには、退職理由があくまでも会社側の都合による退職(解雇や倒産が理由の特定受給資格者)、有期雇用契約終了による退職であること、再就職の為職業指導を受けるのが適切であると認められることが条件です。その他、個別延長給付の対象者と地域延長給付の対象者はさらに細かい条件がありますので確認が必要です。
積極的な就職活動をしていること
失業給付は、就職したい意思があり、すぐに就職できる状態にあることが大前提なので失業給付を受給している間に就職活動をしている根拠が必要です。この就職活動とは、求人募集している会社に採用の応募をすることです。
ハローワークから紹介してもらい求人に応募した回数とそのほかの媒体から応募した回数が就職活動回数といわれます。失業給付の所定給付日数に応じて最低限の就職活動回数が決められています。例えば、所定給付日数が最も少ない90日間の場合は、最低3回の就職活動回数、所定給付日数が最も多い330日間の場合は、最低11回の就職活動回数が必要です。
公共職業訓練校に通うなど就労意欲があること
独立行政法人雇用、能力開発機構、各都道府県の自治体などが行っている職業訓練を公共職業訓練といい、離職中にこの訓練を受けながら就職活動を行うこともできます。この公共職業訓練に指定されている民間のコースも多くあり、無料でいろいろな種類の中から自分の修得したい知識や技術を得る事ができることが魅力的です。
この制度を利用する場合には裏ワザがあります。例えば退職理由が自己都合による退職の場合、待機期間が3カ月ありますが、公共職業訓練を受講することでこの待機期間が免除されるので、すぐに失業給付を受け取れるのです。
また、受講するものによって、1カ月、3カ月、半年、1年間、長いもので2年間の受講期間があり、失業給付の支給日数や受給期間が終了していても職業訓練が終了するまで支給されるので当初の所定給付日数より多く受給できるのです。
無料で新しい知識や技能を習得することがてきるこの公共職業訓練校が指定する講座は、非常に幅広いジャンルが用意されています。各都道府県で受講希望の募集時期や選考日程、受講期間などそれぞれ違うので、自分で早めに確認することが必要です。
また、講座の募集定員も決められていますから、選考するための試験があることも注意したい点です。この受講中は、受講手当と通所手当が支給されます。受講中はハローワークの失業給付を受ける為の失業認定手続きも簡単です。
受講している方は失業認定日が月末となり、訓練校が一括で手続きを代行してくれるので、面談などの時間も必要がなく受講訓練に集中できるので時間も有効活用できます。このようにメリットが多い離職者公共職業訓練なので、人気のある講座は筆記試験や面接があることも覚えておいた方がよいでしょう。
失業保険の受給期間延長制度について
失業給付を受給する条件として、失業状態であり就職する意思があり就職できる状態であることが必要です。
しかしながら、病気にかかり入院したり、妊娠、出産の場合など、理由により就職するのが困難な場合があります。本来受給期間が1年間ですが、その期間を延長をする手続きをしておくと最大4年間まで受給期間を延長ができます。
受給期間延長は受給期間が延びる
再就職先を探す際に生活を支える失業給付ですが、あくまでも、受給期間は、離職した翌日から1年間と決められています。これを過ぎた場合給付を受ける権利を失います。しかし、離職後の自分の状況が就職できないと認められる条件に該当する場合にかぎり、ハローワークで決められた期間内に受給期間の延長を申請することで最大3年間まで受給期間を延長をする事ことができる制度があります。
この手続きをすると4年間失業給付を受給する権利を得られます。注意することは、あくまでも離職した時点で決められた給付日数分を受け取れるということなので、この延長制度は、原則として受け取る1年間の権利の期間を最大4年間に延長をするということです。延長を希望する場合いつまでにハローワークへ申請する必要があるのか認識しておく必要があります。
受給期間延長対象者の条件
病気や怪我などの理由で、すぐに30日以上働くことができないときや、妊娠、出産のため30日以上すぐに働くことができないときに、失業給付受給の取りこぼしがないように、受給期間延長の仕組みができています。これにより、働ける状況になったときに失業給付を受給しながら、再就職先を探すことができるのです。
中でも妊娠、出産の場合は、出産予定日以前の6週間(多胎妊娠は14週間)は、本人の申し出があれば就業させられないことと産後8週間(本人が産後6週間経過後、医師の診断で支障がないと認められ、就業したい場合を除く)は、就業させてはならない決まりがあるのでその間は、30日以上就職することがすぐにできないという労働基準法により、受給期間の延長手続きができるのです。
受給期間延長の対象になる条件
失業給付の受給期間延長は特別な理由がない場合は対象にはならないので注意が必要です。退職後、例えば長期旅行に行ったり海外で短期留学をして帰国後、再就職活動を始めて1年間の受給期間内に失業給付の所定給付日数分を受給する前に1年経過してしまった場合は、受給していない日数分は受給できません。
延長の対象として認められる条件は、働きたい意思はあるものの、30日以上就業することが困難であると認められる状態にある場合のみです。
特定の理由により就労できないこと
妊娠、出産以外の理由でもすぐに30日以上働くことができないとの判断ができるときに受給期間延長が可能な対象者です。
病気やけがですぐに就職できないとき育児(3歳未満)によりすぐに働くことができないとき小学校就学前の子の看護、介護のため、すぐに就職できないとき親族等の看護、介護のため、すぐに就職できないとき配偶者の海外赴任に本人が同行する場合一定のボランティア活動等で引き続き30日以上職業に就くことができない期間がある場合 60歳以上の定年等により離職し、しばらく休養したい(仕事を探さない)場合が対象です。
特定理由離職者や特定受給資格者
失業給付を受給申請するときに自己都合による退職と会社の都合による退職であるか、退職時の年齢により受給する失業給付の所定給付日数に違いがあることは、先に述べた通りですが、さらに「特定理由離職者」「特定受給資格者」という区分けがあり、これに該当すると所定給付日数に違いが出てきます。
また、失業給付を受給するための条件の一つに、離職日以前の2年間に通算して12カ月以上の被保険者である必要があるのですが、特定理由離職者と特定受給資格者は、離職日以前1年間に6カ月以上の被保険者であれば条件を満たしていることとなっています。
「特定理由離職者」とは、うつ病など精神障害による病気による退職者や、妊娠・出産・育児による退職者、または労働契約により契約時に契約の打切りが記載していない場合に契約更新を希望したにもかかわらず会社と契約更新の合意を得られず退職した場合など会社に勤務するにあたり自分の意思によらず一般的にみて勤務することが困難な状況のため退職を余儀なくされたような、正当な理由による自己都合退職者となっています。
この特定理由離職者については、ハローワークでの確認が重要です。「特定受給資格者」とは、会社都合による退職が該当します。解雇や倒産により離職した場合や事業所の閉鎖や事業所の移転のため通勤が困難になり離職した場合の離職者をいいます。
失業保険延長のための必要書類と申請手続きについて
失業給付の申請手続きに行けないなど、自分は受給できないと思っている方がいれば、とりあえず受給期間延長の手続きをすることがおすすめです。後日になって受給しておけばよかったという事のないように、特に妊娠、出産などで諦めようとしている方は、まず居住している地域のハローワークに問い合わせをしてみた方がよろしいでしょう。
ハローワークの窓口で申請する
この受給期間延長の申請手続きは、いつまでに行う必要があるのでしょうか。退職日の翌日から30日を過ぎた日の翌日からさらに30日以内が申請期間となっています。例えば、3月31日に退職した場合、退職日の翌日が4月1日、そこから30日を過ぎた日の翌日が5月1日となり、この5月1日から5月30日の間が申請手続期間です。この期間内にハローワークの窓口で申請します。
郵送で申請手続きができるものもある
この受給期間延長の手続きは、本人がハローワークで直接手続きすることができないような場合や、体調が悪くハローワークに行くのが困難な場合もあるので、郵送または代理の方の手続きが可能です。代理の方が手続きに行く場合は、委任状が必要です。あらかじめ居住する地域を管轄するハローワークに電話で問い合わせをして確認することが重要です。
失業保険延長解除の申請手続きについて
出産を終えて一段落した場合や、病気の疾患の快方などにより、再就職を考える時期が来たとき、最大3年間の失業給付受給期間の延長手続きをしていた場合に、どのような手続きが必要なのでしょうか。事前に申請手続きの準備をしておきましょう。
手続きに必要な書類と準備しておくもの
失業給付受給期間延長解除の手続きには「受給期間延長申請書」「離職票1及び離職票2」「本人の印鑑(認印)」「本人の写真2枚(縦3cm横2.5cm)」「本人名義の通帳(振込先がわかるもの)」「本人の確認ができる公的機関発行物(運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなど)」「妊娠出産による期間延長の場合は母子手帳」が必要です。
延長期間の期限切れに注意する
失業給付受給期間延長手続きをしていた方は、30日以上働ける状態になった際、ハローワークに行って再就職活動ができる状況と判断されれば、失業給付の受給再開を始めつつ就職活動を行う必要があります。
また、延長をした期間内に失業給付の所定給付日数を受給し終えなければならないので、延長をした受給期間最終日を確認し、失業給付を受給し終わるまで何日間が必要かを調べておくことが重要です。また、居住する地域を管轄するハローワークに事前に確認し、受給の再開を早めに行う事が重要です。
失業保険が認定中に扶養に入ることができる仕組み
配偶者が会社員で出産を機に退職した場合は、退職日の翌日から配偶者の被扶養者となる場合が多くあります。被扶養者となることで、健康保険料と国民年金保険料の支払いをする必要がないからです。
まれに1年以上、同じ会社に勤務していて自分の加入していた健康保険制度の任意継続被保険者となる方もいるかもしれませんが、自分で任意継続健康保険料と国民年金保険料の支払いが必要になるので、多くの方たちは、配偶者の被扶養者となるのです。
しかし、失業給付の受給を再開すると受給額にもよりますが、配偶者の被扶養者の資格を失うことになる場合が多いため失業給付を受給している間には国民健康保険料と国民年金保険料の支払いが必要です。
受給日額によって扶養に入ることができる
失業給付を受給再開にあたり、保険料の出費も増えるのですが、これは被扶養者の資格となる年間の収入見込額130万円未満であるという条件に合わないことから配偶者の被扶養者から外れてしまうためで失業給付の賃金日額が3,612円未満であれば、被扶養者の資格を失わなずに済みます。ハローワークで自分の賃金日額を事前に確認しておきましょう。
受給期間延長中は扶養に入ることができる
失業給付の受給期間延長の手続きが済むとその間は失業給付を受給できないので、配偶者の被扶養者となることができます。離職票が届いた後にハローワークで直接か代理人か郵送のいずれかで受給期間延長手続きを完了させると、配偶者の健康保険制度の被扶養者手続きができます。
退職日の翌日から被扶養者の資格を得るには、事象の発生日の30日以内に健康保険制度の被扶養者手続きをする必要があるため、その健康保険制度で受給延長手続きをする場合の被扶養者認定手続きに必要な書類を確認し、もれなく手続きしておく事が重要です。
2017年の失業保険改正について
2017年4月からの雇用保険制度の改正にあたり、失業給付の日額の下限額が最低賃金を下回ることに対応して給付日額の上限加減の引き上げがあります。
被保険者期間が1年から5年までの30歳から45歳未満の所定給付日数の拡充により、日数の延長及び専門実践教育訓練給付の給付率アップにより従来の費用の最大60%が最大70%と大きく変わり、拡充されています。そのほか、育児休業給付の支給期間の延長など、受給する側にとって給付の拡充がされているのが特徴です。
失業保険延長の知識で確実に給付金を受給する
この雇用保険制度など、普段、働いているときにはあまり気にも止めない制度である方が多いことでしょう。せっかく働いているときにずっと納め続けてきた雇用保険料なのですから、自分が受給する立場になったら受給し忘れないように、事前に調べておくと安心です。
失業中にしか縁のないと思っているハローワークでも妊娠、出産や育児休業、介護休業の際にお世話になる制度がありますので、時間をとっていろいろな制度のパンフレットやネットでの情報をこまめにチェックしておくことが大切です。