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【2】国籍、文化、育った環境…自分とは違う国の人と関わる際に意識していること

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外国人と関わるうえで気になるのが、文化や育った背景、考え方の違い。内容によってはトラブルに発展することもあります。久野さんが外国人スタッフを派遣する際に欠かさないのは、登録者に対する人材教育と派遣先への説明。さらに、「この国の人はこうだ」と決めつけずに、フラットな状態で接することを意識しているのだそうです。しかし、登録者と派遣先との調整に心が折れそうになったこともあると久野さんは言います。どのようにして、壁を乗り越えたのでしょうか。

人材教育だけでなく、派遣先への説明を徹底

——外国の方と関わる際、文化と背景が異なることから意見が食い違ってしまうこともあるように思います。久野さんはどうお考えですか?

仰る通りです。どうしても、国によって文化や背景の違いがあるのは仕方のないことですよね。トライフルでは派遣先を紹介するだけでなく、文化の違いによるトラブルが起きないように登録者と先方の緩衝材としての役割も担っています。

——「緩衝材」として気をつけていることは何ですか?

派遣先への説明を怠らないことです。例えば、ヒンドゥー教の国では女性の肌の露出は厳禁です。しかし、クライアントによっては「肌を露出してはいけない」と知らないため、袖がなかったり、膝が見えてしまったりする衣装を貸し出そうとしてしまいます。そういう時は、トライフルが間に入ってクライアントへ宗教的に問題があることを説明し、別の衣装を提案します。

——確かに宗教の問題に関しては、「知らなかった」では済まないケースもありますよね。外国人登録者へ何かフォローしていることはありますか?

日本のルールを説明することです。日本人であれば「言わないでも分かるだろう」というルールでも、海外の方は悪気なく反故にしてしまうことがあるんですよ。例えば、ムスリムの人は1日5回お祈りをしなくてはなりません。しかし、日本では「お祈りがあるから時間に遅れます」とはなりにくいですよね。時間を守ることにシビアな企業であればなおさらです。このため、外国人登録者には派遣前に「日本ではこうなんだよ」という話をします。

しかし、ムスリムの人にとってお祈りは重要なことですから、「お祈りのスペースがあるか」「お祈りの時間をいただけるか」などの調整も派遣先と行います。日本と海外、各々の文化で許容できる部分とできない部分を事前に確認し、双方が納得できる状態で人材を紹介するようにしています。

無意識に作ってしまうフィルターを外して周りと接することを意識

——お話を伺ってきて、久野さんは広い視野をもって登録者や派遣先と接しているように思います。どのようなことを意識してコミュニケーションを図っているのでしょうか?

私は、常に「アンコンシャスバイアス」を持たないように意識しています。

——「アンコンシャスバイアス」とは何ですか?

「アンコンシャスバイアス」とは「無意識の思い込み」という意味です。例えば「キャビンアテンダント」と聞くと、真っ先に「女性」が頭に浮かぶ人が多いと思います。しかし、キャビンアテンダントには男性も採用されています。無意識に「キャビンアテンダント=女性」と思い込んでしまう状態が、アンコンシャスバイアスです。私は、無意識に作ってしまう思い込みやフィルターを外して人と接することを大事にしています。

——生きているうえで、悪意なく「これはこういうもの」と思い込んでしまう場面は多々あるかと思います。そんな「無意識の思い込み」を意識的に外すことを意識されているのですね。

はい。思い込みで行動するのは怖いことです。「相手はこうしてくれるだろう」と思い込んで仕事を進めてしまうと、必ずと言っていいほど「こんなはずじゃなかった」とトラブルが起きます。トライフルと登録者と派遣先で行き違いを起こさないためにも、各々の考え方や思いを擦りあわせる努力をしています。

くじけそうになった時に思い出すのは海外でお世話になった人たち

——非常に細かい部分まで調整を行なっている印象ですが、「大変だな」と感じたことはありますか?

はい。登録者と派遣先との調整役は想像以上に辛く、会社を立ち上げて1年ほどは毎日辞めたいと考えていました。

——「辞めたい」とまで思っていた事業を現在まで続けられているのはなぜでしょうか?

バックパッカー時代に出会った人たちの存在が大きいですね。途上国を巡っていた時、日本語をスラスラ話せるにもかかわらず、お金やビザの都合で日本で働きたくても働けない人をたくさん見てきました。「この現実を変えたい」との思いで、「誰もが自分らしく働ける社会」をテーマにトライフルを立ち上げました。辛いときはバックパッカー時代に出会った人たちのことを思い出して、「やらなきゃ」と気持ちを奮い立たせています。

——バックパッカー時代に出会った方たちが久野さんを支えてくれているのですね。当時のことで印象に残っている出来事はありますか?

旅の途中、各地で出会った人たちに助けてもらったことが心に残っています。「自分が逆の立場だったら、この人たちのように知らない人に優しくできるかな」と思ったんですよ。そこで、彼らに「なぜ見ず知らずの私に優しくしてくれるの?」と聞いてみました。すると、「自分たちはお金がないから世界を見ることができない。あなたは僕らができないことをしているから応援したい」と言われました。心に響きました。

彼らは、私が無事に日本へ帰国してSNSなどで旅について発信することを望んでいました。「我々の国のことを世界に伝えて欲しい」と言われたんですよ。この言葉があったからこそ、辛いときも「諦めてはダメだ」と自分を奮い立たせることができたと思います。

文化や背景の違いによるトラブルを防ぐために丁寧な説明を欠かさない

文化や背景の違いからトラブルが起きないよう、「緩衝材」として人材教育や派遣先への説明を徹底している「トライフル」。久野さんは常に、無意識に作ってしまう「アンコンシャスバイアス」を外して周りと接することを意識しているのだそうです。しかし、細かな調整を行うことで挫けそうになったこともしばしば。心が折れそうになった時に思い出すのは、バックパッカー時代に海外でお世話になった人たちの存在だと久野さんは話してくれました。次の記事では、久野さんの会社員時代の苦悩とバックパッカーとして海外へ向かうきっかけについて伺います。

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