【2】ブランド立ち上げのスタートは職人探しから。飛び込みで街を駆け巡る

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「着物で傘を作る」アイデアを思いついた山村さんが初めに行なったのは、着物で傘を制作してくれる職人を探すことでした。傘を扱う団体に電話をかけ、紹介された工房へ飛び込み、断られても他の傘工房を紹介してもらってそちらへ飛び込むを繰り返す。2日間、都内を駆け巡った結果、信頼のおける職人と出会うことができました。何度も断られてたらい回しになることは、一見、大変そうに見えます。しかし、山村さんはその状況を楽しんでいたのだそうです。なぜ、大変な状況でも楽しむことができたのでしょうか。

2日間都内を巡り、着物で傘を作ってもらえる職人を探した

ーー「着物で日傘を作る」と思いついた後、まずは何をしたのですか?

着物で傘を作ってくれる傘職人探しから始めました。協会や組合など傘を扱っている団体に、「着物で日傘を作ってくれる職人の方はいますか?」と電話をしたんです。挙げてもらった候補先へ直接、交渉しに出向きました。

ーー交渉は上手くいったのでしょうか?

いいえ。私が望んでいたのは工場で大量生産するのではなく、着物そのものの魅力を活かす日傘を作ること。柄のとり方によって傘の美しさや雰囲気も変わるので、1本1本、しっかり柄合わせにこだわった日傘を作りたいと考えていました。私の希望を叶えるとなると、 全てを手作業で作ってもらわなければなりません。ロット数の少なさとコストパフォーマンスの悪さから断られるパターンが多かったですね。

ーー候補先に断られながらも妥協することなく、希望通りに日傘を制作してくれる職人を見つけたわけですね。

はい。先に交渉した方たちも可能な限り力になろうとしてくれて、別の職人の方を紹介してくれることもありました。どこかには思い描いている職人がいると信じていたので、妥協せず探し回り、2日目の夕方に出会うことが出来ました。

周りの人の力も借りることで希望の職人と出会う

ーー交渉に苦戦したとありつつも、2日で希望の職人に出会えたスピード感に驚きました。何か秘訣はあったのですか?

SNSも駆使したことでしょうか。職人探しをしていて苦戦していることをSNSで発信したことで、友人たちから応援と共に、職人の情報を提供してもらえました。その情報も参考にしたことで、最終的には、今依頼している職人に繋がりました。

ーー周りの人からの力も借りたのですね。

職人探しに限らず、友人・知人からはたくさんの情報提供やアドバイスをもらっています。事業自体は1人でやっていますが、協力して下さる全ての人との「チームあきざくら」でやっている感覚があります。

ーー周りの方が協力してくれる理由はなんだと思いますか?

常に「日本人の心を豊かにしたい!」といった、自分の想いを伝えているのが大きいと思っています。それに共感して下さる方が、様々な場面で力になってくれています。着物という日本の文化に関わることを手がけているのも共感してもらいやすい要素だと思います。

ーー山村さんの想いが、職人に出会わせてくれたのですね。

そうですね。結果は想いの総量だと思っています。私の想いと応援して下さる方の想いで結果に繋がりました。

好きなことだからこそ、大変なことも「愉」しめる

ーー何度も断られたら心が折れてしまいそうですが、何がご自身を奮い立たせていたのでしょうか。

私には、自分を奮い立たせるという感覚がなかったです。0から何かを始める時に全てうまくいくなんてことはないですから。もし心が折れてしまうなら、それは本当はやりたくないことなのかなって思います。奮い立たせていたというより、その状況を楽しんでいました。

ーー大変な状況も楽しいと思える理由は何だとお考えでしょか。

好きなことをしているからでしょうか。それに、飛び込みをすると普段聞けない話が聞けたり、普段見れないものを見せてもらえたりと、面白いことがたくさんありました。行動すれば、必ず何かにつながると思っています。こういった取材頂く時の、話のネタにもなりますしね。

ーー確かに、好きなことをするのは楽しいですよね。

そうですね。加えて、私の中で「楽しい」は「愉」の字を使う「愉しい(たのしい)」なんです。ただ与えられた物事を楽しむのではなく、自分自身の気持ちや想いから感じ生まれる楽しい状態のことです。自分の考え方次第ということですね。だったら、人生全てを愉しもうと思って何事にも取り組むようにしています。

好きなことを「愉」しんでいるからこそ大変な状況も乗り越えることができた

山村さんは自身の想いに妥協することなく、2日間都内を駆け巡り職人を探しました。飛び込み営業を苦とせず、周りの人たちを巻き込むことで、最終的に希望通りの日傘を作ってくれる職人と出会いました。側から見ると大変そうなことでも、 「好きなことだからこそ大変なことも“愉”しい」と笑う山村さん。次の記事では、山村さんが 立ち上げたブランド「あきざくら」について詳しくお話を伺います。

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