結婚や妊娠退職でも失業保険は受給可能か。再就職を上手に進める方法
結婚しても働きながら社会と繋がりたい
働く女性にとって大きな課題となるのが、結婚や出産後の再就職。結婚をしても働きながら社会とつながっていたい。結婚や出産で生活環境が大きく変わる中で就職活動がうまくできるか心配。そのような悩みを抱える女性も、少なくありません。
結婚や出産を理由に退職した場合であっても、一定の条件を満たしていれば失業保険を受け取れるということをご存知でしょうか。失業保険の制度を正しく理解すれば、結婚や出産後の就職活動がよりスムーズに行えるようになります。結婚・出産退職時の失業保険の受給方法から注意することなど詳しくみていきましょう。
失業保険を受給するには
失業保険を受給するためには、一体どうすればよいのでしょうか。まず、失業保険を受給するための条件を確認しておきましょう。
雇用保険の納付期間を確認する
失業保険を受給するためにはいくつかの条件を満たしている必要があります。雇用保険の納付期間、勤務期間、働く意思の三つです。まずは、雇用保険の納付期間を確認しましょう。雇用保険を受給するためには、退職した日からさかのぼって2年間の間に、雇用保険料を12カ月以上納付していることが必要となります。
納付期間の確認方法
雇用保険の納付期間を確認したい場合は、これまでの給与明細をみてみましょう。給与明細の「雇用保険」という欄に金額の記載があれば、雇用保険が納付されています。
雇用保険の保険料は、一般的に勤務先より給与から天引きという形で差し引かれます。そして、勤務先が労働局に対して雇用保険料を納めるという流れです。
勤務期間を確認する
雇用保険を受給するにあたって、勤務期間も確認しましょう。受給を受けるためには、離職した日からさかのぼって2年間の間に、11日以上働いた月が12カ月以上ある必要があります。
しかし、退職理由が倒産などの会社の都合や、結婚して遠方に引っ越すので勤務が難しくなってしまったなどの「特定理由離職者」と認められる場合は、必要な勤務期間が通常とは異なるので注意しましょう。「特定理由離職者」は、離職した日からさかのぼって1年間の間に、11日以上働いた月が6カ月以上あることが必要となります。
働く意思が必要
失業保険を受給するためには、働きたいという意思が必ず必要です。失業保険の受給中は、四週間に一回(28日間)の頻度でハローワークに就職状況の報告をして、受給の認定を受けます。働きたいフリをして失業保険を受給すると、不正受給となってしまうので申請の際には気をつけましょう。
不正受給とみなされた場合は、雇用保険の全額返還、場合によっては失業保険の約3倍の金額を支払わなくてはならないなどの重い罰が科されてしまいます。
結婚退職での受給資格について
結婚を理由に退職した場合でも、条件を満たしていれば失業保険の受給が可能です。
働く意思があれば受給できる
結婚が理由の退職であっても働きたいという意思があれば、条件を満たしている場合に失業保険の受給が可能です。しかし、失業保険は働く意思が必ず必要です。結婚後に専業主婦になる場合などは、失業保険の受給はできません。
結婚退職時の受給期間
結婚退職時の失業保険が受給できる期間は、自己都合で退職した場合と同じ期間です。失業保険の受給期間は、雇用保険に加入していた期間によって決定されます。
受給期間
- 雇用保険の加入が1年未満の場合:受給なし
- 雇用保険の加入が1年~10年未満の場合:90日間
- 雇用保険の加入が10年~20年未満の場合:120日間
- 雇用保険の加入が20年以上の場合:150日間
結婚で転居が伴う退職の場合は受給期間が変わる
しかし、結婚が理由で遠方へ引越しするための退職などは「特定理由離職者」と認められます。「特定理由離職者」は、通常とは受給期間が大きく異なってくるので注意しましょう。
「特定理由離職者」は、雇用保険の納付期間が1年未満でも90日間失業保険が支給されます。必要条件を満たしていたにも関わらず、失業保険をもらえなかったということがないよう、退職理由と雇用期間はしっかりと確認しましょう。
受給できる金額
失業保険で受給できる金額は、前職で受け取っていた給与によって決まります。受給金額の計算方法は、以下の通りです。
- 賃金日額×給付率=1日あたりの失業保険の受給額
- 賃金日額=離職前の半年間の給与の総額÷180
失業保険の給付率は、所得額によって決まります。給付率は、基本的に50%~80%の場合が多いです。一般的な会社員の方であれば、平均で約80%前後の給付率になります。
遠方への転居が伴う退職の場合
結婚が理由で遠方へ引越しするために通勤が難しくなったなど、遠方への転居が伴う結婚退職の場合は「特定理由離職者」と認定されます。失業保険の受給条件などが、一般的な受給者とは異なる点が多くあるので注意しましょう。
普通の受給と異なる点
「特定理由離職者」に認定された場合の、受給条件などの違いをみてみましょう。
- 雇用保険の納付期間が退職した日からさかのぼって1年間で6カ月以上から受給が可能
- 失業保険手当の申請完了後、7日間の待機期間後に3カ月の給付制限期間がなく受給ができる
退職から転居までの期間に注意
結婚して遠方への転居が伴う退職の場合、退職した日から転居をする日までの間が約1カ月以内である必要があります。退職から転居までの期間が1カ月以上空いてしまうと、引越しの理由が結婚であるか自己都合であるかの判断が難しくなり、「特定理由離職者」として認定されなくなってしまう場合があります。
結婚と妊娠が理由で退職するとき
結婚が理由の退職は、普通の退職理由の場合と同じように失業保険を受給できることがわかりました。それでは、妊娠が理由で退職する場合も併せて確認しておきましょう。
働く意思があれば受給期間を延長できる
「妊娠を理由で退職するけれど、出産後も働きたい。」という働く意思がある方であれば、失業保険の期間を延長することができます。失業保険の延長制度を利用すれば、受給期間を最大、三年間延長することが可能です。
失業保険を受給できる期間は、退職した翌日から一年間です。この一年間も合計すると、実質受給期間を最大四年まで延長ができます。結婚・妊娠・出産は、さまざまな費用がかかってしまうもの。失業保険の延長制度を上手に利用すれば、出産後の就職活動をスムーズに進められます。
受給期間を延長するための手続き方法
失業保険の受給期間を延長するための手続き方法は、ハローワークに専用の「失業保険受給期間延長申請書」を提出します。その際に必要な書類は以下の四点です。
必要な書類
- 離職票
- 印鑑
- 延長理由を証明できる書類(必要な場合)
- 雇用保険受給資格証
申請期間
失業保険の受給期間の延長手続きは、退職した翌日から30日経過した日から1カ月以内です。この期間をすぎてしまった場合は、失業保険の延長手続きができなくなってしまいます。
延長手続きを行わないと、約数十万円と大きな金額を受け取り損ねてしまうことになってしまいます。手続きの申請期間は十分に注意しましょう。
代理人や郵送でも手続きは可能
妊娠中は体調が悪くなりやすかったり、妊娠後期で思うように動けない女性もいます。手続きは本人でなくても、郵送や代理人でも申請が可能です。
受給期間の延長で気をつけたいこと
失業保険の受給期間の延長で気をつけたいことは、まず延長手続きの申請期間です。たった一日でも申請期間をすぎてしまうと、延長をすることができなくなってしまいます。受給期間の延長手続きを検討している方は、申請期間をハローワークでしっかりと確認するようにしましょう。
また、受給期間の延長後に一日でも働くと延長解除となってしまいます。たった一日働いたことで、約数十万円分の失業保険をもらえなくなってしまっては、とても勿体ないので気をつけましょう。もし、どうしても事情があって働きたいという場合は、本来であれば受給できる失業保険の総額などをよく考えてから、ハローワークに相談しましょう。
また、失業保険の受給期間を延長できるのは一度だけです。出産後に二人目を妊娠して働けなくなってしまったなどの場合であっても、再び受給期間の延長手続きを行うことはできません。
制度を利用して上手に就職活動をしよう
結婚や出産後の再就職は、社会との関わりを持つことで家庭と仕事にメリハリを持てるというメリットがあります。何かとストレスを抱えがちな育児も、仕事をすることでオンオフが切り替えられて、気持ちが楽になったというママも多いです。
失業保険の制度を上手に活用すれば、就職活動をよりスムーズに行うことができます。失業保険の制度を利用して再就職を目指し、すてきな新生活を築いていきましょう。