事実婚を選ぶメリットやデメリットなど知っておきたい内容について
事実婚についてどんなものなのかを紹介
最近増加の傾向があるといわれている「事実婚」ですが、事実婚の定義について明確に分からない人も多いのではないでしょうか。事実婚とは、婚姻の事実関係を表す言葉です。籍を入れずに事実上の夫婦である生活を送っているケースのことですが、概念についてはさまざまな状況があります。
事実婚という言葉に関しては、法律上の結婚はしていないが、夫婦のように暮らしている人達というイメージではないでしょうか。しかし同棲と状況は同じなのではないかと思う人もいるでしょう。事実婚と同棲がどう違うのか、内縁とはどう違うのか疑問が浮かんできます。
例えば、籍を入れずに別居生活を送りながら週末だけ会うという形はどうなのだろうか、そして生計は一緒で、週末だけ別の生活を送る未婚のカップルはどうなのかなどなど、考えれば考えるほど謎が深まってきてしまいます。現在は、さまざまな形を選ぶカップルがいるため、ある意味選択肢が広いといえます。
事実婚も将来視野に入れて考えたい人が知りたい、事実婚のメリットやデメリット、そして事実婚が示す状況は何なのか、事実婚についての知識や状況を知ってみましょう。籍を入れることに障害がある人や、迷っている事情がある人もぜひ考えてみてください。
事実婚について
さまざまな状況がある事実婚は、実さいどのような条件や状況があることで事実婚となるのか、同棲とはどう違うのか、内縁との違いなどについて知っておきましょう。
婚姻はしていないけど生活は一緒
事実婚の定義とされる意味は、法律上の婚姻ではないが社会的に見て一般的な夫婦と同様の生活を送っていることをいいます。それぞれ理由があってという場合もありますが、結婚届を出さないのは自分達の意思によるものだという意味が強いのが事実婚です。
夫婦別姓のために事実婚を選ぶ場合もあり、古くからいわれる内縁を現代的なスタイルに言い換えたような意味があります。結婚という制度に対して、夫婦という概念の規制を受けたくないというケースや、とくに女性は、職場で結婚をしたということがわかると、キャリアに響くといった理由などからのケースもあります。
そして事実婚の場合は婚姻はしていなくても、生活が一緒であることがポイントです。一緒に生活をし、生計を同じにしていることで、夫婦同様の生活を送っているとみなされます。婚姻届けを出していない夫婦としての共同生活といったところです。
夫婦としての自覚がある
事実婚は、夫婦として一緒に住んでいる、夫婦の感覚がある、夫婦同様の暮らし方をしているという夫婦の自覚があるかということが重要ポイントです。婚姻届けを出さずに、法律的には夫婦とは認められなくても、事実上の生活は夫婦という自覚がある場合が事実婚といわれます。
自分達の意識だけでなく、周りの人からも夫婦であるとみなされていることも大事です。しかし法的な婚姻がされていない場合、一般的にどのように捉えられるかは難しく、同棲していると思われるケースもあります。しかし関係性が徐々に伝われば、夫婦として扱われるようになるでしょう。
事実婚は、夫婦としての生活はしたいけど籍を入れたくないという人達のことです。籍を入れなくても、結婚生活とおなじような生活を送る人達で、家族として将来的に暮らしていく意思があることになります。
同棲とは違う
多くの人が違いがよくわからないという、事実婚と同棲の違いとはどんな部分にあるのでしょうか。同棲とは、婚姻をしていない男女がひとつの家で暮らすことを定義とされています。あくまで恋人関係であり、結婚の意識はないという点が事実婚との違いになります。
同棲カップルというのは、恋人同士が暮らすことを指すので、暮らし方がどんなに夫婦のように見える過ごしていたとしても、夫婦の意識がない状態なので同棲となります。同棲をするカップルの中には、将来的に結婚をするために結婚前に生活をスタートする場合もあります。
しかしこの時点では事実婚とはならず、あくまで同棲となります。これは本人達が恋人同士であるという意識であるためです。事実婚は、お互いに夫婦であるという意識がある場合になるので、これが大きな違いだといえます。
内縁と少し違う
同じく事実婚と違いが明確にならないといわれる内縁は、どうなのでしょうか。内縁は実さいには同じ意味を持ち、夫婦関係の同意があり共同生活をしていること、生活費などの生計を一緒にしている人達のことになります。夫婦別性を選びたい人に多く、婚姻を意図的に選ばない人という点は事実婚とほぼ変わりません。
内縁と事実婚は、ほぼ同じ状況を示しますが、違いといえば事実婚は自分達の意思で結婚を選択していないという意味が強くなります。しかし内縁というのは事情があり、婚姻届けを出さないという人達もいます。例えば、家族の反対にあい結婚が許されていない場合などです。
そして再婚のため子供の問題などを抱える人などは、問題が解決するまで内縁という形を取るケースもあります。内縁という言葉に、マイナスイメージを抱く人が多いため、最近では事実婚ということが増えてきています。
同性同士の事実婚
最近増えてきている同性同士の事実婚は、男女の事実婚とは違う意味となります。彼らは結婚の意思があっても、法律的に婚姻ができないため事実婚を選ぶことしかできないのです。男女の事実婚は、結婚を選ばないからという理由ですが、同性同士の場合は結婚したくてもできないからということになります。
同性同士の婚姻は国内では認められていないですが、パートナーシップ証明書を発行する条例が認められ、一部の都市では、同性同士の事実婚を証明する手続きを行っています。法的な保護はありませんが、一部民間でのサービスなどが受け入れられるなど、徐々に形が変わってきています。
これは同性同士の婚姻は認められないものの、彼らの差別をなるべく排除し、生活が少しでも望むものに近くさせるためでもあります。まだ欧米諸国に比べて本格的ではありませんが、彼らの事実婚を少しでもサポートしていくことへの働きも広がっています。
事実婚の方法
法律的な婚姻をしていない事実婚でも、夫婦である証明のような婚姻の意思があることを表せる方法があります。事実婚の場合でも、住民票を移さずそのままにしている人がいますが、住民票を同一世帯にすることで、世帯主が男性なら、夫(見届け)、自分の欄に妻(見届け)と記載することができるのです。
この住民票があれば、婚姻届けは提出していないけれど、夫婦としての意思があるということの証明にもなります。この住民票により、結婚している夫婦と同じように、健康保険・公的年金・行政サービスや、手当の一部を受けられるものがあります。
世帯主については3つの方法があり、世帯を別にしてそれぞれが世帯主になるのが、世帯を分離する方法です。そして同一世帯にする方法には2つあり、夫と妻と記載するパターンと、世帯主が夫、女性が同居人とする方法です。
ただし、住民票の記載が夫(見届け)、妻(見届け)の場合だけが行政などのサービスが受けられるようになります。事実婚であるとわかる住民票だけが対応できます。
事実婚で生活するさいのポイント
事実婚として生活をしていくには、通常の結婚と同じような生活ポイントもありますが、事実婚ゆえに必要なポイントもあります。よりよい生活を送るために、事実婚で生活するポイントについて知ってみましょう。
お互いの意思を確認する
事実婚をすると決めたときに、お互いに意識が違っていれば今後の生活に支障をきたす可能性があります。例えば、どちらかが同棲と同じような感覚で考えていれば、お互いの意識が違ってしまいます。まず事実婚を選ぶなら夫婦としての同意が必要だといえます。
事実婚は、結婚と同じく生計を一緒にして暮らします。その中で、事実婚に認められている効果がいくつかあります。同居・協力・扶助義務や、貞操義務・婚姻費用分担義務・日常家事債務の連帯責任などさまざまな効果があり、お互いに認識をしておく必要があります。
経済面の確認
生活費などお金に関わる事をきちんとしておくことも大事です。法律的な婚姻をしていなくても、事実婚は夫婦と同じです。生計を同じにし、お互いの収入を一緒に生活に使うことになります。夫婦の意識があったとしても、経済面のことについてはお互いにしっかりと確認をしておくことが重要です。
財布をひとつにして、お小遣い制にするのか、銀行口座はどうするのか、生活費と貯蓄用に一つの財布にし、残りを自由に使えるかなどのルールを決めておく必要があります。法律上の婚姻関係がないという部分が、揉めたときにネックにならないよう、お金の部分は曖昧にしないようにしましょう。
お互いの決め事
夫婦関係でありながら、法的な結婚がないことで、事実婚ゆえの悩みや疑問があります。それらをクリアしていくために、お互いの守りたいこと、大事にしたいこと、目標などお互いの決め事をしっかりと共有しておく必要があります。
例えば、子供ができた場合のことがあります。認知届をいつ出すべきか、法律婚に切り替えるのか、子供の姓はどうするのかなど事前に話し合っておくべきです。そして事実婚を解消した場合の責任問題なども含め、将来起こりうる問題についてしっかり考えて、2人の意見をまとめ納得のいく答えを出しておきましょう。
お互いの両親に理解してもらう
事実婚という形で夫婦生活を送る場合、お互いの両親に理解してもらわなけらばいけません。両親の反対を押し切って無理やり生活をしても、あとあと問題が起きたり、どこか背徳な気持ちが拭われず、上手くいくものも上手くいかなくなってしまいます。時間はかかっても、お互いの両親の理解を得るようにしましょう。
お互いの両親に理解してもらい、協力を得られる関係となったら、次はお互いの両親の事を話し合うことも大事です。将来的に両親に何かがあった場合、介護などの協力をお互いにできるのか、実家が遠方の場合はその時点で引っ越すことはできるのかなど、自分達の事実婚がどこまでのルールなのかを確認しましょう。
事実婚を選ぶ人の考え方
法的な結婚を望む人が多い中、事実婚を選ぶ人の考え方はどのような考え方をしているのでしょうか。なぜ事実婚を選択するのか、それとも何らかの理由などがあり選択せざるを得ないのかなど、事実婚を選ぶ人の考え方について知ってみましょう。
子供の気持ちを考えている
事実婚を選ぶ人の中には、一度結婚をし子供を設けた人もいます。離婚後、子供を引き取り生活をしている中で、新たに出逢った相手と再婚を考えてみたものの、子供の気持ちや状況やタイミングなどを考えると、法的な結婚には踏み出せない人もいます。
このようなケースの場合は、一時的に事実婚をし、何年後かに婚姻を考えていることが多いです。子供が再婚に対して抵抗がなく、新たな家族を受け入れられるタイミングや、受験や進学などの状況が落ち着いたら、法的婚姻に切り替えるようになります。
事実婚のあと子供ができた場合、事実婚を選んで生活してきたものの、やはり子供のことを考えて法的な結婚を選択しようと考える人もいます。事実婚のスタイルを続ける人もいますが、子供ができると子供の気持ちも考えて変わる人もいるのです。
親族に反対されていて婚姻できない状況
事実婚をしている人の中には、結婚を選びたくても選べないために事実婚となっている場合もあります。例えば、親族に自分達の結婚を反対されているため、法的な婚姻ができない人もいます。その中でも、家族の反対を説得中の人や、結婚を諦め事実婚として生活している人もいます。
どうしても解決しない家族の反対の場合は、事実婚を続けるしか方法がなくなり、結婚を諦めるしかないと考え、中には親族の反対を説得しながら事実婚を続け、親族の理解を得られたら正式に法的な婚姻をしようと考えている人もいます。
結婚を敢えて選択しない人とは違い、理由がある事実婚のケースです。結婚を考えていても、結婚を反対されてしまう状況で事実婚を選択していれば、同棲よりも夫婦として生活を続けられるので、同棲ではなく事実婚を選ぶ人が多いのです。
結婚か再婚か悩んでいる
離婚経験がある人は、再婚という形でまた法的な結婚を選ぶべきか、事実婚でしばらく様子をみようと考える人もいます。事実婚状態を続けて、この相手と本当に長く結婚を続けられるのかどうか見極めたいというケースです。いちど離婚をした人はその経験から二度目の結婚には慎重になります。
結婚から離婚の大変さを経験し、結婚生活が破たんしてしまった状況などが、悩んでしまう原因となっているのです。好きな相手と結婚したい気持ちはありつつも、どこか慎重にならざるを得ない気持ちがあるのです。そのため、事実婚という形を選び迷いながら生活をしているというケースです。
海外で事実婚を選ぶ人の理由
海外に比べて日本は、結婚のスタイルについてはまだ保守的なところがあります。日本に比べて、さまざまな結婚の考え方やスタイルがある海外で、事実婚を選ぶ人の理由とはどんなところにあるのでしょうか。海外で事実婚を選ぶポイントを知ってみましょう。
経済面での負担
法的な結婚を選ぶ人が年々減っている傾向が、欧米諸国などでは増えています。理由には、離婚率の高さや、婚姻するとお金がかかるという経済的な問題があります。とくにロンドンなどの大都市部では、物価が急騰し家賃が高騰しているため、家族で家を借りて子供を育てるということが難しくなっています。
事実婚や同棲などは、法的な婚姻をしなければ結婚式など諸々かかる費用を抑えることができ、裕福な家庭でない限り結婚する必要性をあまり感じられなくなっている傾向があります。
婚姻してからの制度が面倒
離婚率が高い欧米諸国では、結婚をしてもいつか離婚するのではないかという考えが日本以上に強いのが特徴です。それに加え、離婚の可能性もあるのに保険や名字の変更などさまざまな手続きの手間がかかることも結婚のネックになっているといえます。
どこか離婚するかもしれないのに、面倒な手続きを繰り返してもとドライに考えているタイプが多いのです。そのため、事実婚を選ぶ人が多くなるということです。
結婚生活に自信がない
離婚率が高い欧米諸国では、結婚生活に自信が持てない人が多くいます。どうせ離婚するかもしれからいっそ結婚しない方が効率的だと考えたり、結婚はしたいけど婚姻に失敗したくないという不安を抱える人も。離婚するカップルの多さに、結婚に対する自信を失ってしまっている人も増えているのです。
婚姻の重要性が分からない
結婚という概念も、昔と比べて変わってきた日本ですが、欧米諸国は更に変化しています。結婚以前に、シングルマザーになる女性も多く、子供を産んでから結婚を選ぶか、事実婚を選ぶか、シングルマザーとして生きるかを選択することも多いそうです。妊娠しても結婚しなくていい風習が根付いてきています。
その理由には、婚姻しても状況は変わらないと思うため、結婚する重要性が分からない人が増えてきているのです。
離婚手続きが大変
離婚率が高い欧米諸国では、離婚に時間がかかることがネックだと考える人も多くいます。例えばイギリスでは子供がいる場合、男性が家を出なければいけません。そして別居生活を1年以上続けることで離婚が成立します。お金がないからといって、同居のままではかなり時間がかかってしまいます。
カナダでも、同じく1年以上別居期間を持たなければいけない法律があります。結婚しても離婚するなら、離婚手続きを考えるととりあえずでも、事実婚を選ぶという考え方になるのでしょう。
挙式を上げなければならないから
イタリアでは、結婚式をせずに結婚するということはできません。必ず教会での神前婚や市役所で行う民事婚を行い、結婚届を提出しなければならないのです。そのため経済的な負担が高く式の出費が凄いこともあり、事実婚を選ぶケースが増えています。しかし中には事実婚を数年経て、結婚する人もいます。
イタリアでは、正式に結婚をする前に同棲を勧める文化があります。事実婚でも、5年や10年生活をして正式に結婚を決める場合もあるそうです。
同性婚ができないから
海外でも同性婚が認められていない国は、まだまだあります。同性同士のカップルが、法的に結婚ができないから事実婚を選ぶという選択をするケースは多くあります。イタリアでは、キリスト教の総本山であるバチカンがあるので、キリスト教の影響力が高い国です。
そのため、まだまだ同性婚が認められる見通しはありません。そういった宗教の背景などの影響により、同性婚が認められない同性カップルは事実婚を選んで、家族として暮らしている人も多くいます。
出産しても婚姻する必要が無い
日本では子供ができたことをきっかけに、結婚に踏み切るという考え方があります。しかし欧米諸国では子供と婚姻はまったく別だと考える人も多くいます。例えば、イタリアでは子供を男性が認知すれば扶養義務が発生するため、婚姻関係を持たなくてもとくに変わりはありません。
子供も両親が籍を入れていようが、いなかろうが関係なく、家族のスタイルがどんな状態でも、家族の関わりがあれば問題ないと考えます。
事実婚でも控除の対象になる 同棲契約
イタリアでは事実婚届けというものがあり、事実婚を証明されるものがあります。そして同性契約で配偶者控除の対象となり、どちらかが死亡した場合は配偶者と同等の権利を持ちます。年金受給については、配偶者の受取はできません。イタリアでは、事実婚についての権利や義務などの法律が出されています。
パックスという制度がある
フランスでは、事実婚が一般的に浸透しているといわれていますが、これにはパックス(連帯市民協約)という制度があることも大きいといえます。これは18歳以上のカップルが、持続的な共同生活を営むために交わされる契約です。もともとは同性婚が認められていなかったことからできたものです。
パックスを契約すると、社会保障や税金など結婚と同様の権利を得ることができるため、結婚をせずに事実婚でいるカップルも多くいます。理由としては、やはり結婚・離婚の大変さや、結婚という形にこだわらない生き方などにあります。
恋愛をしていたい
フランスなどのヨーロッパでは、結婚というスタイルを取らずに、恋愛をしていたいという生き方を選ぶ人もいます。仕事を含めた自分自身の生き方がはっきりしている彼らにとって、今の環境で満足であればそれでよいという考え方もあります。
もちろんいずれ環境が変わったり、考え方が変われば結婚を選ぶ可能性もありますが、先々のことよりも今を大事にする傾向が強いといえます。
事実婚のメリット
さまざまなことがある事実婚ですが、実さい事実婚を選ぶメリットとはどんなことがあるのでしょうか。事実婚を選び、生活を送る上でのメリットについて知ってみましょう。
協力し合う扶助義務
事実婚には、お互いに協力しなければならないという扶助義務があります。婚姻をした場合にも、この扶助義務があります。事実婚の場合は、法的な婚姻ではありませんが、夫婦として生活を送るという考え方から、婚姻している人と同等の法律が適用されるべきだということなのです。
もし事実婚をしていてこの扶助義務や同居・協力などを破棄したとすれば、慰謝料請求の対象となります。法的な婚姻をしていないから関係ないとはいかず、事実婚であってもこのように夫婦と同様の法律が準用されるのです。
姓を変更しなくて良い
事実婚のメリットのひとつに、夫婦別姓が成り立つことがあります。特別理由がなくても、姓の変更が無いので楽だということです。法的な婚姻をした場合、大抵が男性の苗字に切り替えます。そのためパスポートや貯金通帳などや、さまざまな法的書類の変更などが必要になります。
しかし事実婚であれば自分の姓を変更する必要がないので、面倒な手続きが省けるのがメリットです。そして会社などでも事実婚であれば姓が変わらないので、事実婚とはいえ夫婦だと気づかれず、キャリアに影響しないというメリットを感じる女性もいます。夫婦別姓を望む人にとっては、大きなメリットです。
貞操義務がある
事実婚であっても、法的婚姻と同じく貞操義務を守る義務があります。お互い以外の人と、性的関係を持たない事、もちろん浮気や不倫は当然御法度です。法的な関係がないからといって、浮気や不倫は裁かれないと考えている人は、大きな間違いなのです。
事実婚であっても、浮気や不倫が発覚し、事実婚を解消になる場合、相手を裁く権利があります。法的婚姻でないため、相手の浮気や不倫が裁かれないのではないかと不安になる人もいるかもしれませんが、きちんと裁く権利があるのです。
婚姻費用分担義務がある
事実婚であっても、婚姻費用分担義務があります。これは、お互いの生活費用の負担の責任であり、共同生活を送るうえでの衣食住のお金などをお互いに負担しなければいけないという、婚姻に準ずるものとしての義務があるのです。
例えば男性が外で働き女性が家事を行う場合は、お互いの合意があっての協力とみなされます。しかし女性だけが働き、男性は何もせず家にいるというのは、偏った婚姻費用となり婚姻費用分担義務を怠っていることになります。義務があるということを認識すれば、お互いに協力し合えることにつながります。
生活の家事債務の連帯責任
事実婚でも法的な婚姻同様に、日常家事債務の連帯責任の義務があります。夫婦が、日常に必要な買い物をした場合の債務責任は、夫婦が連帯して返済する義務のことです。例えば男性のクレジットカードを利用して買い物をし、返済ができなくなった場合は夫婦連帯責任となります。そして債務は折半になります。
これは、あくまで夫婦の生活で必要なものを購入した場合のことであり、日常生活に必要ではない高級な宝石などは対象ではありません。法的婚姻をしている人と同じく、日常家事債務の連帯責任の適用があるので、夫婦生活の中で一方だけが返済を背負うということにはなりません。
事実婚を解消しても戸籍に影響がない
法的な婚姻をした場合は、戸籍を同一のものに変えます。しかし事実婚の場合は戸籍を変える必要がありません。婚姻して離婚した場合は戸籍に記載されるので、戸籍に結婚をして離婚をしたという事実が残ります。
しかし事実婚を解消した場合は、もともとそれぞれ別の戸籍のままであり、戸籍に事実婚の記録が残ることはありません。事実婚をしていた事実はあっても、戸籍への記録はされないので、その後別の人と結婚することになっても初婚ということになるのです。
解消する時に慰謝料が発生する
事実婚でも、万が一相手側に事実婚解消の原因や不当破棄などがある場合は、慰謝料の請求が可能となっています。これは法的婚姻があっても、事実婚であっても夫婦として生活を送っているという観点から、夫婦であることに変わりがないという考え方からとなっています。
例えば、事実婚の相手が浮気や不倫をしたことが原因で、事実婚解消の原因となってしまった場合は、相手に対して慰謝料の請求を出すことができる権利があります。これも法的な婚姻関係がなくても適用される権利としてのメリットだといえるでしょう。
妻と夫という関係性に縛られない
法的な結婚は、未だに女性が男性の姓に変えるのが一般的です。しかし事実婚については苗字を変更することがないので、男女対等な関係性があるのがメリットだといえます。結婚にある、男の責任と女の責任がないということになります。
もちろんそれぞれの夫婦によっては、法的婚姻と同じく、男性が外で働き女性は専業主婦をするという事実婚カップルもいます。しかし事実婚の場合はそれぞれが戸籍も別であり、生活を共にする夫婦であっても個人個人だという意識があります。
そのため男性だから女性だからといった固定概念が必要なく、それぞれのスタイルで生活を送ることができます。
同居する義務がある
事実婚には、同居する義務があります。同居協力義務があり同居をしていることだけでなく、お互いの生活や生計を協力し合うことの義務があるのです。例えば同居をしていながらほとんど家に帰ってこなくて、経済面での協力や家事などの生活への協力がないというのは、事実婚解消の理由になります。
事実婚は婚姻している夫婦と同じように、夫婦として生活を協力する義務があり、ただ同じ屋根の下で暮らしていればよいというわけではありません。そのためお互いに協力を求め助け合っていくことをしなければならないということになるのです。
事実婚の注意ポイント
さまざまなメリットもある事実婚ですが、注意しなければいけないデメリットもあります。事実婚の注意ポイントを理解して、事実婚選択の参考にしてください。
周りに理解されない
事実婚という言葉は、徐々に認知度が上がっていますが、まだまだ一般的には理解されていないことも多くあります。事実婚をすると決めたのであれば、まず両方の親族に理解してもらわなければいけません。両親の世代では、まだ事実婚に対してよいイメージを抱いていない可能性があります。
それなりの理由と、説得できる情熱が必要になるでしょう。両親の世代では、法的な婚姻をよしとする人がほとんどです。そして世間体などもあり、簡単には理解されない可能性もあります。事実婚をする理由を、しっかりと説明できるようにしなければいけません。
友人に反対される可能性がある場合もあり、両親や友人など自分の大事な人達に理解してもらうことへの労力は覚悟しておく必要があります。
子供の戸籍
事実婚で生まれた子供の戸籍は、自動的に母親の戸籍となります。そして父親は認知は出来ても親権は母親となります。父親と子供の関係性を法律的に証明させるには認知をする必要があります。しかし子供の戸籍は母親に入り、親権は母親となるのです。父親とは別の戸籍となります。
そして子供の姓は母親の姓を名乗ることになります。もし途中で父親の姓を名乗らせたいということになった場合は、入籍届を出すことで家庭裁判所の許可が必要ですが、変更することができます。やむを得ない理由で親権を変更したい場合は、親権管理権届を提出することで変更ができます。
相続できない可能性がある
事実婚は、法律的に婚姻していないため、財産を相続できない可能性があります。婚姻している場合は、どちらかが亡くなった場合、配偶者が法定相続人となります。しかし法律的に婚姻をしていない場合の事実婚の場合は、配偶者とはいえ法律的には他人なため法定相続人にはなれません。
そのため財産を事実婚の配偶者に残したい場合は、遺言を残す必要があります。そして生命保険の保険金受取人も通常では事実婚の配偶者にはできません。受取人を事実婚の配偶者にしたい場合は、保険会社の規定を確認してください。
遺言により、財産を受け取れることになったとしても、法的婚姻をしている人より相続税が掛かるので、財産を受け取ったものの、負担額が大きくなってしまうこともあり、よく話し合って決めるようにしましょう。
控除の対象から外れる
扶養というものは、2つの種類があります。1つは、税法上の扶養そして2つめは社会保険上の扶養となります。事実婚で控除の対象から外れるのは、税法上の扶養のことです。法的に婚姻をしている場合、配偶者控除そして配偶者特別控除を申告できます。
しかし事実婚の場合は法律的に他人となるため、対象外となってしまいます。社会保険上の扶養については、婚姻している夫婦同様の扱いとなるため、同様の保障を受けることができます。会社によっては家族手当の受給も可能になります。但し事実婚をしていることの証明が必要になります。
年金がもらえない
遺族年金については、原則として法的婚姻されている配偶者が受け取る資格があります。これは事実婚では戸籍上の関係がないからです。しかし事実婚の状態であっても受け取れるケースもあるのです。事実婚をしていて、相手側に婚姻関係のある配偶者がいない場合で、同一世帯のケースです。
住民票上で同一世帯となっている場合であれば、遺族年金の審査にあたって受給しやすいことになります。住民票が別の場合は、別途証明する書類が必要となります。住民票を同一にしておくことで、さまざまな証明がしやすく、同一にしておくことにはメリットがあるといえます。
事実婚の相続権についてのポイント
事実婚の場合、配偶者には相続権がないことは先程説明しましたが、事実婚の場合でも相続について知っておかなければならないポイントがあります。事実婚の相続権についてのポイントを知っておきましょう。
3年たったら保険受取人にできる
事実婚であっても、いざというときの生命保険を掛けておきたいという人は多いはずです。しかし、保険会社が販売する一般的な生命保険の保険金の受取りは、婚姻関係にある配偶者もしくは2親等以内の血族となっています。これは、保険金詐欺などの犯罪を防ぐための理由です。
しかし、事実婚の配偶者であっても保険金の受け取り人になることもできます。そのためには、3つの条件があります。ひとつめは、お互いに戸籍上の配偶者がいないことです。例えば、離婚をせずに新たなパートナーと事実婚をしているというケースは対象外です。
そして2つめは、保険会社が定めた期間、同居を続けていることです。保険会社によっては、3年以上とされている会社もありますが、保険会社によっても違い、年数だけではクリアできないこともあるため、詳細はあまり記載されていません。直接確認をしてみるようにしてください。
3つめは、同居だけでなく生計を保険会社が定めた期間共にしていることです。同居をしていても、生計が別であれば対象外となるのです。保険会社にとっても非常に審査を厳しくせざるを得ない保険金受取人なので、証明できる書類の提出が必要となります。
執行者を指定する
法的婚姻をしていない事実婚の場合、配偶者には相続の権利はありません。法定相続人となることができるのは、認知した子供、その人の両親や祖父母、兄弟姉妹となります。いくら長年連れ添った相手であっても相続の権利はないのです。
事実婚の配偶者に財産を残したい場合は、遺言書を作成する必要があります。死因贈与契約をしておく必要があります。そして不動産を遺贈する場合は、遺言執行者の指定をしておく必要があります。遺言執行者がいない場合は、また別途手続きが必要となります。
認知していれば子供は相続人になる
事実婚の妻である配偶者は相続人になることはできませんが、二人の間に生まれた子供には、認知している場合は法定相続人となります。事実婚で生まれた子供を認知していない場合は、父子関係を法律上で証明できないため相続人となることはできません。
事実婚で生まれた子供は、母親の親権となるため、父親が認知をしていなければ父親との関係性を証明できないためです。母親である事実婚の妻とは、法律上の関係性が証明できませんが、認知した子供であれば血のつながりが証明されるため、法定相続人となることができます。
事実婚の相続に関しては、血縁関係もしくは法的な婚姻がなければ権利がありません。そのため配偶者である妻より、血のつながりのある子供に権利が与えられるのです。相続については、自分達の財産によっては法的婚の方がスムーズな場合もあり、相続税についても負担が少なくなる可能性もあります。
事実婚はデメリットも理解して自分らしく選択
徐々に増え続けている事実婚は、メリットもある代わりにデメリットとなることも多くあります。事実婚を選択する理由がなんであるのかにより、考え方や将来のことなどが変わってきます。事情があって事実婚にしている人と、敢えて事実婚を選んだ人では考え方が違って当然です。
事実婚であっても夫婦同様の義務が発生するため、生活自体は婚姻している夫婦とあまり変わらないといえます。結婚に縛られることを理由に事実婚を選択したいという人もいますが、実さいの生活の中では結婚している夫婦と同じような環境になります。
事実婚を選択するさいは、お互いの意思や考えをしっかりと話し合うことが大切です。そして周りの人の理解を得るために説得ができるような意思を持つことも成功の秘訣となります。自分達らしいスタイルの生活を選ぶことにより、デメリットも理解して生活しやすい環境を作っていきましょう。
事実婚を続けながら、のちに法的婚に切り替えることもでき、自分達の状況に合ったスタイルを選択できるのは、とてもよいことだといえます。さまざまな状況の中で、選択肢があるということは人それぞれの形で生活スタイルを選ぶことができるということです。