【2】人の目が気になって何もかもうまくいかない! 長いスランプから抜け出せたワケ
須山さんは子どものころから「願いは現実になる」と確信し、実際に体験していました。ところが、大人になるとその考えができなくなり、同時に絵を描いてもうまくいかずに苦しい時期に突入します。独立して苦労したことはないけれど、この時代は本当につらかったと須山さんは振り返ります。そんな中、星空を見た須山さんの心に変化が訪れます。
自分の願いは現実になる! そう確信していた子ども時代
―前回のインタビューで「会いたいと思った人には会える」とおっしゃっていました。他には、どのような方とお会いしましたか?
ファッションイラストレーターのエドツワキさんで、彼の絵を見たときにファッションイラストレーターになろうと決めたんです。友人のライブに遊びに行ったら、彼がいて「ファンです!」と伝えて握手してもらいました。木村拓哉さんにも会いました。彼が出演するCMのパッケージを私が手掛けたんですよ。うれしかったですね。
会いたい人には必ず会えると知っていたし、子どものころから自分の思いは現実になる感覚を知っていました。
―具体的にはどのようなことが現実になりましたか?
懸賞で「絶対当たりたい!」と思うとだいたい当たるんですよ。お菓子のバーコードをハガキに貼って送ったり、雑誌の懸賞に応募したりすると、ぬいぐるみとか当たるんです。願ったことは叶う、私ってなんてラッキーなんだろうと思っていました。
でも、19、20歳くらいになるとそう思っちゃいけない、現実的にならなくちゃと思うようになりました。
努力してもうまくいかない。自らがんじがらめになっていた20代
―現実的にならないといけないと思うようになったのは、なぜですか?
まわりが就職活動をしていて、焦っていたんでしょうね。他人の目線も気にしていたと思います。そうすると、願ってもかなわないというか、考えがそういう方向になってしまうんです。もっと現実を見ようみたいな。このころはがんばっていたけれど苦しかったです。
―どのように苦しかったのでしょうか?
「ファッションイラストレーターの須山裕子」をみんなに伝えるんだと思っていて、雑誌などの紙面上に載ろうという目標を持っていました。自分が上に行くというイメージ。でも、うまくいかないんです。
イラストレーター仲間を結局はライバルだと見ていました。仲間の絵を口では褒めても、心のなかではバカにしていました。くやしかったんです。悔しくて相手を認められない。自分と相手を比べちゃって、苦しくて苦しくて。
相手のいいところを見つけていくのが自分の得意なところだったのに、反対のことをしていました。自分がどんどん嫌になり、そこから抜け出すためにもっとがんばらなくちゃとリキんでしまい悪循環に陥っていました。
今は、ここから抜け出せましたが一番つらかった時期です。
自分の絵を描きたい! 星空を見て気づかされた本来の自分
転機となったCM撮影 子どもたちが傘を使って自由に作品を創った
―そこから抜け出せるきっかけはありましたか?
子ども向けの造形教室で講師をしていているのですが、その教室でCM撮影があり千葉のキャンプ場へ行ったときのことです。そこで撮影が終わったあとにバーベキューをしていたとき、空を見たら星空がすっごいきれいだったんです。
そのときに、自分が描きたい絵を描きたい!と強く思ったんです。 なぜか「私は色に選ばれた!」という考えが浮かび、真夜中でしたが急いで車を飛ばして家に帰って絵を描きました。
そこから気持ちが子どものころに戻り、描きたいから描くという考えにシフトしました。
―星空からどのようなことを感じたのでしょうか?
星空に自分の本来の姿を見せられた気がしたんです。
今までは、カッコつけて生きてきた気がします。こんな風に見られているという目線を気にしながら生きてきました。でも、星空を見たときに「私は私のままで生きよう」と決めました。
まとめ:うまくいかない、心がつらい。それでも転機は必ず訪れる
アーティストでなくても、20代の須山さんのように仕事などで成功したいけれどうまくいかず、他人の成功を喜べない人は多いのではないでしょうか。他人を羨んでしまう感情が出てくるのは自然なことですが、その思いが強すぎると自分を苦しめてしまいます。
そんな状態の方にとって、須山さんがスランプから抜け出せたというのは励みになるでしょう。心が変わるきっかけは人それぞれですが、自分が変わりたい、良くない状態から抜け出したいと強く思い続けていると必ず転機が訪れるように思います。
第3回目のインタビューでは、須山さんが自分の心とどう向き合っているかを伺います。