【2】これってビジネスになる?プランを固めるために私がしたこと:入海祐子さんインタビュー
ビジネスのアイディアを思いついても、それがビジネスになり得るのか、どうやって形にするのかわからなかった入海さん。そこで、始めたのは「人に相談すること」。人に話すことで、意外な自分の姿が見えたり、不明瞭なものが明確になったりするのだそうです。
100人いないかもしれないけれど、10人はいるかもしれません
―トレーナーとして起業するために、どのようなことをしましたか?
「女性起業家支援のセミナーや勉強会に参加したり、3カ月くらい起業家向けスクールに通ったりしました。中でも良かったのは『人に話すこと』です。起業家スクールの同期だった方から紹介していただいたコンサルの方に私が始めたいことを相談してみたんです。
心配だったことは、私の接客術がビジネスとして成り立つかどうかでした。お金を払ってでも聞きたい人がいるかどうか、不安だったんです。すると、コンサルの方が『100人いないかもしれないけれど、10人はいるかもしれませんよ』とおっしゃってくださったんですね。自分が必要されているかもしれないと思い勇気が出ました。
私は、感覚でモノを捉える傾向にあるので、受講者の方に接客術を理解していただくためにどうお伝えすればよいのか苦労しました。これも、コンサルの方に相談しながら、固めていきましたね。私一人ではこの接客術は完成しなかったかもしれません。ですから、自分の考えなどを人に話すこと、発信することって大切だと思っています。」
発信したら思わぬ強みを発見! 自信がついた
―なぜ、発信することが大切だと思いますか?
「人に話すことで、自分では気づけない強みに気づけるからです。例えば、会社員時代に社内で部下たちの評価をする際、彼女たちの何が強みか、それをどう活かせるかを伝えるようにしていました。ところが、当の本人は自分の強みに気づいていないことが多かったですね。自分のことって、意外とわからないんです。
私も自分の強みに気づいていませんでした。 以前は、その日にお客様と話したことを主人に伝えていて、『今日は、こんなお客様が来て、こう接したらとても喜んでくれた』という内容だったのですが、それを主人が毎回大絶賛してくれるんですね。それがとてもうれしかったんです。そこで、自分にとっては当たり前のことも人にとってはそうではないんだなと実感しました。また、強みを知ることで自信も付きました。
他にもあります。自分のしていることやアイディアを発信すると、評価してもらえることがあります。例えば、私の接客術を論文という形で発信したときのことです。
社内で海外研修の募集があり、一次審査が論文でした。そこで、自分が実践している接客方法を題材にして論文を提出したら、審査に通ったんです。会社に認めてもらえたのだから、私がしていることは間違っていないと確信しました。当時は、接客術としてまとめようと考えていませんでしたが……。」
独自の接客術、後にビジネスになった「入海ワールド」
―入海さんの接客術はどのようなものなのでしょうか?
「お客様を笑顔にしたいという思いと、お客様ともっと仲良くなることを重視していて、好きな人に接するように接客するというものです。具体的には、自分の大好きな人に対する気持ちと行動で目の前のお客様と接するというもので、『恋する接客術』と名付けました。
私の接客方法は丸井時代、同僚たちから『入海ワールド』と言われていました。お客様とのお話が盛り上がり、仲良くなるのを見た同僚が私の友人が来たのかと聞いてきたので驚きました。」
―具体的にどのような接客をされていましたか?
「私は時計担当として長く在籍しました。当時、時計は家電量販店や海外で購入するほうが安かったんです。そのため、丸井で時計を見て、その後に家電量販店か海外で買う人が多かったんですね。
それに対して、私は最初は残念だなと感じていましたが、考えを改め、あえて海外で買う予定の方にていねいに接客し試着していただき、カタログも渡しました。家電量販店で買おうとしている方には自店と家電量販店、どちらがどのくらい安いかをお客様の前で調べました。当然、家電量販店の方が安いので『あちらの方が安いですよ』とお伝えして。でも、私からご購入いただくことの良さをしっかりお伝えし、最終的に私から買ってくださった方もいらっしゃいました。」
他者の意見に耳を傾けることで広がる可能性
他者に話すことで、自分の強みが見えたりビジネスプランが固めたりできたのは、人の話を素直に聞こうとする入海さんの人柄も影響しているでしょう。
時には、人の意見を聞きたくない時もあると思います。そんな時は、どんなに良い意見をもらえても心に響きません。入海さんのように、意識して人の意見に耳を傾けることで見えなかったモノが見えてくるかもしれません。
入海さんも以前は、自分の考えを他者に話すことができなかったと言います。次回はそれがどう変わったのか、また、壁にぶつかった時はどうしているのかに迫ります。