【4】自身の経験や愛をパワーに変えて、様々な企業との新規事業に挑戦:道場月音さんインタビュー
オタクビジネスをメインに、様々なエンターテインメント関連の企画を打ち出してきた道場月音さん。様々な業界や規模の会社と関わる中で、企画の幅を出せるようになったと言います。そんな道場さんが手掛けるすべてのビジネスには、根底に“愛”がありました。
エンタメから考える日本企業の新しい可能性
―最近ではどのようなビジネスに挑戦されているのでしょうか?
「最近は主に、エンタメを使ったコンサル事業に力を入れています。過去に私たちが関わってきた企業の担当者さんが、私たちのことを覚えていてくださって、新しい案件に繋がることが多いので、嬉しいですね。全くエンタメから遠い企業様から、世界的なキャラクターIPを持つような企業様まで、幅広くお仕事をさせていただいています。それぞれの企業様ごとに、事情も、使えるお金も、経営層の性格も全然違いますが、それぞれに合わせた企画をオリジナルで何十個も練らなくてはならないことが多く、かなり鍛えられました。」
―企画は何十個も思いつけるものなんですか?
「意外とやればできます!企画書1枚に1アイデアを記載するような方式でお出しすることが多いのですが、1週間あれば20個くらいは余裕です。清水と2人だからこそできる、というのは大前提ですが。雑談のような話をするうちに盛り上がり、アイデアが湧いてくるんです。」
―道場さん個人的に意識していることはありますか?
「日頃から社会に目を向けることです。一見エンタメとは遠いように思えるかもしれませんが、社会課題は、そっくりそのままビジネスに結びつくことが多いんです。そもそもエンタメの流行も、社会や時勢の影響を多分に受けていますし。だからこそ、社会課題に関しては色んな媒体から情報を仕入れ、自分の頭で考えるようにしています。例えば『なぜ日本人にはこんなに余裕がないのかな?』とか。」
―確かに今の日本社会は余裕がないように思います
「比較的恵まれている層が『自分も大変なのに、人なんて助けてられるかよ』と、思っちゃう世の中かと。でも、そんな人たちが、ちゃんと自分たちのことをケアできる状態になれば、みんなで助け合っていくべきだと思えるようになり、社会がちゃんと健全化していくのではないかと、マクロ視点から見て思っています。そういうビジネスにも、チャンスがあれば挑戦したいです。
「天才を殺す凡人」に見る、秀才であることの辛さ
―コロナ禍では、働く人たちの悩みや葛藤が見えにくい世の中となりましたが、道場さんはどんなことを感じていますか??
「なぜ、みんながこんなに頑張らなきゃいけないんだろうと、日々思っています。『天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩む、すべての人へ』という書籍がありましたが、私はそのなかで言えば、秀才の世界で生きてきたんだと思います。秀才の世界はどこへ行ってもピラミッドがついてまわり、頑張ったらまた、その上に行かないとダメな構造でした。いつか脱落するまで、それを続けなきゃいけないということで、人生ってしんどいなと思ったことがありました。」
―その悩みは打開できたのですか?
「起業したことで、秀才の物差しで測れないことをやれているので、それが隠れみのとなり、相当楽になりました。ようやくピラミッドを崩すことができたなと思えたのが、起業してからの2年でしたが、そこは本当に大きかったです。」
ビジネスでのモットーは「愛をもち、愛に甘えないこと」
―将来的なビジネスのテーマやビジョンについても聞かせてください。
「自分のなかのテーマは愛です。『Hamaru Strategy』のフィロソフィーは、『愛を持ち、愛に甘えない』ということ。まずは、自分たちが作るものに対して、ちゃんと愛を持つことと。そして、ファンの方に甘えないことも大事です。例えば何かのグッズを作るとして、ファンだと少し質の悪いグッズでも、買ってしまうことがあると思いますが、それは作り手がファンの愛に甘えて作っている行為だから、絶対ダメだなと。その2つをポリシーとして、自信を持ってものづくりをしていきたい。将来的には、そういうことを積み重ね、自分の周りに愛があふれる空間を作れればいいなと思っています。」
―今後、起業を考えている人へのメッセージをお願いします。
「私みたいに、一緒に起業したいと思える人が現れることはそうそうないと思うので、本業のほうを少しずつ縮めていき、副業的に始めるのがいいのかなとは思っています。法人にすること自体はそれほどリスクがなく、実際にペーパーカンパニーもいっぱいありますし、最初は個人事業主として自分が得意なことや小売などから始め、タイミングを見て法人化すればいいだけかなと。」
―ハードルを下げてできることからスタートするということですね。
「そうです。経営者の経験はすごく希少価値が高いものだと思うので、たとえ失敗しても、転職する時、すごく有利になると思いますし、部署異動みたいなテンションで、始めればいいんじゃないかなとも思ったりします。
私はすごく体が弱いので、この1年は特に1日8時間働けたという日はほぼなかったけど、それでも仕事は成り立っています。会社員時代と同じ働き方をしてたら、起業した意味がない。全部そこに身を捧げて頑張るような起業は、男性社会の考え方であり、身の丈にあったことを粛々とやっていくのがこれからの時代の起業のスタンダードになっていくんじゃないかと。だから自分のペースでやっていくのが一番いいと思います。」
≪まとめ≫自分のペースで愛のあるものを作っていく
道場さんの会社における『愛を持ち、愛に甘えない』という精神がとても素敵です。それはこれまでの経験を経て得られたスピリットですが、そういうぶれない軸を持つことは、経営者にとって大切なことだと思いました。また、シャカリキな競争社会に身を投じて自分自身をすり減らすのではなく、起業したことで、ハッピーな働き方を身につけられたという経験談は、コロナ禍を生きる私たちにとって、とても心に染みる気がしました。
《株式会社Hamaru Strategy》
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